家賃滞納者を追い出すには? 違法にならない正しい手順と注意点を解説
賃貸経営
2026.05.13
更新日 2026.05.14
家賃滞納者への対応は、多くの不動産オーナーにとって頭を悩ませる問題です。「すぐに退去させたい」と思っても、法律上は簡単に追い出せません。誤った対応をすると、オーナー側が不利になるリスクもあります。
本記事では、家賃を滞納している入居者を退去させるための条件や具体的な手順、してはならない行為、拒否された場合の対応方法、家賃滞納を防止するための対策などを詳しく解説します。家賃滞納にお悩みの方やリスクを軽減したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
家賃滞納者を追い出すことはできる?
家賃を滞納している入居者がいる場合でも、一定の条件を満たせば退去してもらえる可能性はあります。とはいえ、実態としては難しいケースも多いです。具体的には、以下のような事情で追い出せないことがあります。
家賃を滞納しているだけではすぐに追い出せない
「1カ月家賃を滞納している」という理由だけで、入居者を強制的に追い出すことはできません。これは、日本の法律では、貸主よりも借主の居住権が強く保護されているからです(借地借家法)。
例えば、家賃滞納をしている入居者の中には「突然職を失い、やむを得ず家賃を支払えなくなった」「家賃を支払う意思はあるのに、病気で支払いが難しい」といったケースもあります。このような状況で即座に退去させると、人権侵害と見なされる可能性があります。
※参考:e-GOV 法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)」 (参照2026-04-22).
退去には「契約解除」が必要
入居時には、貸主と借主の間で賃貸借契約が締結されます。この契約が有効な状態である限り、たとえ家賃の滞納があっても、直ちに退去を求めることはできません。
そのため、退去を求めるには、まず賃貸借契約を解除する必要があります。
詳細は後述しますが、賃貸借契約を解除するには、所定の手順を踏む必要があります。
また契約が解除されたからといって、それだけで強制的に立ち退かせられるわけではありません。家賃滞納者が自主的に退去しない場合は、法的措置を取らなければならないこともあります。この点に関しても、後ほど詳しく解説します。
家賃滞納者を追い出すための条件
家賃滞納者を追い出すための明確な基準は定められていません。過去の判例では、連続して3カ月以上の滞納が続いた場合に、強制退去が認められたケースがあります。
ただし、これもあくまで一例に過ぎません。一般的な期間の目安は、3〜6か月以上です。そのため、一回のみの滞納や、1〜2か月の滞納では、強制退去が認められる可能性は低いといえるでしょう。
また法的措置を取る際には「貸主と借主の信頼関係が破綻しているかどうか」が重要な判断基準となります。これは、入居者の支払い状況や、滞納後の支払い意思の有無などを踏まえて、総合的に判断されるものです。
3か月以上の滞納があっても、借主と連絡が取れており、支払いの意思が確認できる場合には「信頼関係は破綻していない」と判断されることもあります。一方、滞納が継続的でなくても、短期間に繰り返し滞納している場合には、支払い意思がないと判断され、強制退去が認められる可能性があります。
なお、信頼関係の破綻が認められるためには、滞納の事実だけでなく、書面による記録を残しておくことも重要です。
※参考:最高裁判所「裁判例結果詳細」.“事件番号 昭和24(オ)143 (参照2026-04-22).
家賃滞納者を追い出す手順
では、家賃滞納者を追い出すためには、どのような手順を取る必要があるのでしょうか。滞納が発生した段階から、順を追って見ていきましょう。
家賃滞納の事実を通知する
家賃の滞納が発生した場合は、まずその事実を入居者に通知することが重要です。
振込忘れや入金漏れの可能性もあるため、この段階では「お知らせ」として冷静に事実を伝え、滞納の理由や支払い予定日を確認します。
支払いの意思があるものの、経済的な事情ですぐに支払うことが難しい場合には、分割払いの提案や支払い猶予の設定を検討しましょう。
督促状を送付する
通知をしても連絡が取れない場合や、支払いが確認できない場合には、入居者に対して督促を行います。
この段階では、通知よりも一歩踏み込んだ対応として「督促状」を送付します。督促状自体に法的な強制力はありませんが、簡易書留や内容証明郵便で送ることで、送付した事実を記録として残すことが可能
です。
ただし、督促状の段階では、過度に強い表現は避け、あくまで冷静かつ穏やかな文面で支払いを求めましょう。また連帯保証人への連絡などを検討していることを示唆し、相手に緊張感を持ってもらうことも重要です。
催告書を送付する
督促状を送付しても支払いが行われない場合は、催告書を送付します。
催告書は、督促状よりもさらに強い意味合いを持つ最終通知です。文面には、支払いがない場合に契約解除や法的措置へ進む可能性があることを記載します。
なお、賃貸借契約を解除するには「相当の期間を定めた催告」を行うことが必要とされています。そのため、催告書は契約解除の要件を満たす上でも重要です。
内容証明郵便で送付し、いつ、誰が誰に対して、どのような内容を通知したのかを記録として残しておきましょう。
連帯保証人に連絡する
入居者からの支払いが確認できない場合は、連帯保証人にその旨を連絡します。
連絡するタイミングに明確な決まりはありませんが、催告書を送付しても支払いがない場合や、2回目の督促状を送付しても反応がない場合などが一つの目安です。
いきなり連帯保証人に請求するのではなく、まずは滞納の事実を伝え、入居者に対して支払いについて相談してもらえないか依頼するとよいでしょう。
前述の通り、督促状の段階で連帯保証人への連絡を検討している旨を伝えておくことで、トラブルの回避にもつながります。
賃貸借契約の解除を通知する
催告書を送付しても、期限内に入居者や連帯保証人から支払いが確認できない場合は、賃貸借契約を解除する旨を書面で通知しましょう。
将来的に法的手続きへ進む際には、この通知が契約解除の正当性を裏付ける重要な証拠になります。
契約解除後、入居者が自主的に退去すれば、この後解説する法的措置に進む必要はありません。任意で明け渡しが行われる方が、オーナーにとっても負担が少なく、メリットが大きいです。
「建物明渡訴訟」を起こす
契約解除をしても入居者が立ち退かない場合は「建物明渡訴訟」を起こします。
この訴訟では、裁判所が貸主・借主双方の事情を踏まえ、明け渡しが適切かどうかを判断します。明け渡しを命じる判決が出た場合、貸主は法的根拠に基づいて入居者に退去を求めることが可能です。
「強制執行の申立て」をする
建物明渡訴訟で明け渡しを命じる判決が出たにもかかわらず、入居者が退去しない場合は、最終的な手段として「強制執行の申立て」を行います。
この申立てが認められると、法的手続きに基づいて入居者を強制的に退去させることが可能です。
強制執行が決定されると、裁判所の執行官が入居者に対して、明け渡しの期限や執行日を含めた強制執行に関する通知を行います。期限を過ぎても退去しない場合には、強制執行が行われ、執行官によって入居者の荷物などが外に運び出されます。
【注意】家賃滞納者に対してしてはならないこと
家賃滞納が発生すると、何とかして回収したいと考えるのは自然なことです。また悪質なケースでは、早く退去してほしいと感じることもあるでしょう。
しかし、裁判所や行政機関を介さずに貸主の判断で以下のような対応を行うと「自力救済」という違法行為に該当する可能性があります。
● 入居者が不在の間に無断で室内へ立ち入る
● 入居者の荷物を勝手に搬出・処分する
● 鍵を無断で交換し、室内に入れないようにする
● 脅迫的な言動で退去を迫る
● 早朝や深夜に督促を行う
● 本人と連帯保証人以外に滞納の事実を伝える
自力救済を実施すると、貸主側が不利になる恐れがあります。そのため感情的に対応するのではなく、適切な手順を踏み、必要に応じて法的手続きへ進むことが重要です。
任意の立ち退きを拒否された場合の対応方法
任意での立ち退きを拒否された場合、これからご紹介する方法を取ることで、法的措置に頼らない解決につながる可能性があります。
家賃回収を諦める
未払い家賃を支払えない事情から、入居者が任意の退去に応じないケースは少なくありません。このような場合には、未払い家賃の回収を諦め「〇月〇日までに退去すれば未払い分の支払いを免除する」といった条件を提示すれば、退去に応じてもらえる可能性があります。
未払い家賃を回収できないことはデメリットですが、家賃滞納者が長期間居住し続けると、その間の家賃収入は得られず滞納額ばかりが膨らんでいくでしょう。建物明渡訴訟や強制執行といった手段は有効ではあるものの、時間や費用がかかるため、オーナーの負担は大きいです。
手続きの負担や総合的な損失を踏まえると、未払い分の回収を断念してでも早期に退去してもらい、次の入居者を確保した方が、メリットが大きくなる可能性があります。
生活保護または住居確保給付金を申請してもらう
入居者が次の住まいを確保できないことを理由に、退去に応じないケースもあります。このような場合は、生活保護や住居確保給付金の申請をしてもらうことで、解決につながるかもしれません。
生活保護には家賃補助があります。上限額は世帯人数や地域によって異なりますが、利用を検討してもらう価値があるでしょう。場合によっては、家賃だけでなく転居費用も補助の対象となるため、入居者の金銭事情が改善せずとも引っ越しが実現する可能性があります。
入居者が生活保護に抵抗を示す場合には「住居確保給付金」という制度もあります。これは、収入の減少などにより家賃の支払いが難しくなった場合に、求職活動などの一定の条件を満たすことで、家賃補助や転居費用の支援が受けられる制度です。入居者の中にはこの制度を知らない人もいる可能性があるため、オーナーから提案してあげるとよいでしょう。
これらの制度を活用して居住を継続する場合は、行政の支援により滞納リスクの軽減が期待できます。また転居につながれば、問題の早期解決にもつながるでしょう。
※参考:厚生労働省.「生活保護制度」 (参照2026-04-22).
※参考:厚生労働省.「住居確保給付金」 (参照2026-04-22).
家賃滞納を防止するための対策
家賃滞納が起きても、簡単に入居者を退去させることはできません。トラブルに巻き込まれないようにするには、家賃滞納を防ぐための対策を立てておくことも重要です。
具体的な対策方法を2つご紹介します。
家賃保証会社との契約を必須にする
家賃滞納を未然に防ぐためには、入居時に家賃保証会社との契約を必須とする方法があります。
近年、賃貸借契約の際に連帯保証人を立てる代わりに、家賃保証会社の利用を条件とするケースが増えています。家賃保証会社を利用すれば、万が一滞納が発生した場合でも、保証会社が家賃を立て替えて支払う仕組みとなっているため、オーナー側のリスクを軽減することが可能です。
保証料は入居者が負担するのが一般的なため、オーナー側に経済的な負担もありません。
保証内容は会社ごとに異なるため、導入を検討する際は複数の会社を比較し、自身の物件に適したものを選ぶことが重要です。
不動産管理会社に管理を委託する
家賃滞納のリスクを抑える方法として、不動産管理会社へ管理を委託することも効果的です。
管理を任せることで、滞納が発生した際の連絡や督促、家賃回収などの対応を代行してもらえます。
家賃の督促や回収業務は精神的な負担が大きく、時間もかかるため、専門会社に任せることで負担を軽減できるでしょう。
ただし、管理会社ごとに対応範囲は異なるため、複数社を比較した上で、自身の物件に適した会社を選ぶことが大切です。
【まとめ】家賃滞納者の追い出しは「正しい手順」が重要
家賃滞納が発生した場合でも、無条件に入居者を追い出すことはできません。しかし、適切な手順を踏めば、最終的には法的な手続きによって退去を求められる場合があります。
注意すべきポイントは、自己判断で強引に退去させようとすると違法となる恐れがある点です。本記事で解説した流れに沿って対応し、支払いを求めながら、信頼関係の破綻を裏付ける証拠を積み重ねていくことが重要です。
なお法的措置には時間や手間、費用がかかるため、オーナー側の負担も大きくなります。そのため任意での退去を促す工夫や、事前に滞納リスクを抑える対策を講じておくことも大切です。
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