【サラリーマン大家さんの確定申告ガイド】経費計上できる項目や青色申告のメリットを解説
賃貸経営
2026.06.12
更新日 2026.06.16
会社員として働きながらアパート経営を行う、いわゆる「サラリーマン大家さん」にとって、確定申告は避けて通れない重要な手続きです。
不動産所得が一定額を超える場合、確定申告は必ず行わなければなりません。また一定額以下の場合でも、申告を行うことでメリットを得られる可能性があります。
本記事では、サラリーマン大家さんに向けて、確定申告の概要や計上できる主な経費、申告の流れ、青色申告のメリットなどを分かりやすく解説します。本記事を参考に、確定申告の正しい知識を身に付けて、税負担を軽減しながら不動産経営を行いましょう。
目次
サラリーマン大家さんには確定申告が必要
会社員として給与を受け取っている場合、通常は給与から所得税が差し引かれているため、自分で確定申告を行う必要はありません。しかし、給与所得者が不動産投資を行っている場合は、確定申告が必要になるケースが一般的です。
ここでは、確定申告の基本的な内容や、サラリーマン大家さんに確定申告が必要となる理由について見ていきましょう。
確定申告とは?
確定申告とは、1年間で得た所得を基に所得税を計算し、税務署へ申告・納税するための手続きです。
申告期間は原則として2月16日から3月15日までで、前年度(1月1日〜12月31日)の所得を対象に行います。なお、土日祝日の関係で期間が後ろにずれる場合もあります(※)。
※参考:国税庁.「申告と納税」(参照2026-04-12).
年間20万円以上の不動産所得は申告の義務がある
給与所得や退職所得以外の所得が20万円を超える場合は、会社員であっても原則として確定申告が必要になります(※)。この対象には不動産所得も含まれるため、不動産投資を行っているサラリーマン大家さんで、20万円以上の所得がある場合は、申告を行わなければなりません。
なお、不動産所得とは、家賃収入から必要経費を差し引いた金額を指します。
※参考:国税庁.「No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人」 (参照2026-04-12).
不動産所得が年間20万円以下の場合は申告は不要?
給与収入が2,000万円以下で、給与を1カ所から受け取っており、その全てが源泉徴収されている場合や、給与所得や退職所得以外の所得が20万円以下の場合など、一定の条件を満たしている方は、確定申告は原則として不要です。
ただし、この場合であっても住民税については別途申告が必要となるので注意しましょう。
前述の通り、不動産所得とは、家賃収入から必要経費を差し引いて算出される金額のことです。例えば、年間の家賃収入が100万円で、経費が85万円かかった場合、残る不動産所得は15万円です。この場合、確定申告は必須ではありません。
しかし、不動産所得が20万円以下であっても、確定申告を行った方がメリットを得られるケースが多いです。
特に、不動産経営による経費が収入を上回り赤字となった場合「損益通算」を活用できます(※)。これは、他の所得と損失を相殺できる仕組みのことです。給与所得と不動産所得の赤字を合算することで、所得税の負担が軽減できます。
※参考:国税庁.「No.2250 損益通算」(2025-04-01).
サラリーマン大家さんが確定申告をしない場合のリスク
「確定申告は難しそう」「何をすれば良いか分からない」といった理由で、申告を後回しにしているサラリーマン大家さんも多いかもしれません。
しかし、前述の通り、不動産所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。それにもかかわらず申告を行わないままでいると、本来より所得税が少なく申告されている状態となり、最悪の場合、脱税と判断されるリスクがあります。
また申告していないことが発覚すると、過去にさかのぼって追徴課税が課される恐れもあります。たとえ不動産所得が小さく、わずかに20万円を超えている状態だからといって、安心はできません。
不動産管理会社やマンション管理会社などの委託先、入居者側の申告状況などから、マイナンバーを通じてオーナーの無申告が判明することもあります。
サラリーマン大家さんが確定申告で計上できる主な経費
サラリーマン大家さんが確定申告を行う際には、不動産経営にかかった費用を経費として計上できます。ただし、対象となるのはあくまで不動産運用に関連する支出のみであり、プライベートの支出は含められません。
正しく申告するためには、経費として認められるものとそうでないものをしっかりと把握しておくことが重要です。
ここからは、不動産経営で計上できる主な経費について詳しく見ていきましょう。
※参考:国税庁 NATIONAL TAX AGENCY.「やさしい必要経費の知識」 (参照2026-04-23).
※参考:国税庁.「No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」 (2025-04-01).
※参考:税務署.「令和7年分 収支内訳書(不動産所得用)の書き方」 (参照2026-04-23).
減価償却費
減価償却費とは、建物や建物附属設備など、時間の経過とともに価値が減少する資産について、その減少分を費用として計上するものです。
建物の構造や設備・備品の種類ごとに法定耐用年数が定められており、その期間にわたって分割しながら毎年経費として計上できます。不動産経営における経費の中でも、比較的大きな割合を占めることが多い項目です。
なお、土地は時間の経過によって価値が減少しないとされているため、減価償却の対象には含まれません。
※参考:国税庁.「No.2100 減価償却のあらまし」(2025-04-01).
※参考:国税庁.「No.3261 建物の取得費の計算」(2025-04-01).
管理費・管理委託費
管理費とは、掃除や点検など、物件の維持・管理にかかる費用を指します。
また建物の管理や入居者対応を不動産管理会社やマンション管理会社へ任せている場合に発生する管理委託費についても、経費として計上できます。
修繕費
修繕費とは、建物の老朽化や破損、設備の故障などに対応するための費用のことです。定期的なメンテナンス費用や退去時の原状回復費用なども含まれ、経費として計上できます。
ただし、工事の内容や規模によっては、修繕費ではなく「資本的支出」と判断され、減価償却の対象となる場合もあります。
広告宣伝費
入居者募集のためにかかった費用は、一般的に「広告宣伝費」として経費計上が可能です。具体的には、不動産ポータルサイトへの掲載料やチラシの作成・印刷費、物件の写真撮影費用などが該当します。
また入居者募集の際に不動産会社へ仲介を依頼した場合の費用も計上できます。加えて、不動産購入時に発生する仲介手数料は原則として建物の取得価格に含まれるため、広告宣伝費ではなく、減価償却の対象となることにも注意が必要です。
ローン関連費用
不動産取得のために組んだローンのうち、利息部分は経費として計上できます。なお、土地取得にかかるローンの利息も対象に含まれます。ただし、元本の返済分については経費にはできません。
またローン契約時に保証会社を利用している場合、その保証料も経費として扱えます。ただし、長期間分の保証料をまとめて支払っている場合は、支払った年に一括計上するのではなく、契約期間に応じて分割して計上しなければならないので注意が必要です。
保険料
所有している物件にかけている火災保険や地震保険の保険料も、経費として計上できます。加えて、以下のような保険も対象です。
● 施設賠償責任者保険
● 孤独死保険
● 家賃補償保険料
ただし、経費として認められるのは、あくまで賃貸経営に関係する物件にかかる保険料のみです。自宅にかけている保険料は、経費には含められません。
税金
不動産経営に関連して発生する税金も、経費として計上できます。具体的には、以下のような税金が対象です。
● 不動産取得税
● 登録免許税
● 固定資産税
● 都市計画税
● 印紙税
経費として認められるかどうかは、その税金が不動産の取得や管理に必要なものかどうかで判断されます。なお、個人の所得税や住民税、法人税については経費として計上できません。
サラリーマン大家さんの確定申告の流れ
サラリーマン大家さんが確定申告をする際、どのような流れで進めていけば良いのでしょうか。以下で、順を追って解説します。
※参考:国税庁 確定申告書等作成コーナー.「作成の流れ」 (参照2026-04-23).
1. 必要書類をそろえる
サラリーマン大家さんが確定申告を行う場合、必要となる書類には、主に以下のようなものがあります。
● 源泉徴収票(給与所得)
● 不動産の収入金額が分かるもの(通帳・現金出納帳など)
● 不動産売買契約書
● 不動産賃貸借契約書
● 不動産取得税・固定資産税の通知書もしくは納付書
● 前年度の借入返済表
● 譲渡対価証明書
● 家賃の送金明細書(不動産管理会社に委託している場合)
● 損害保険の保険証券
● 経費の領収書
具体的にどのような書類が必要かは、事前に税務署や税理士に確認しておくと安心です。
2. 青色申告決算書・収支内訳書を作成する
必要書類がそろったら、年間の総収入と必要経費を整理し、不動産所得の金額を算出しましょう。その上で、青色申告の場合は「青色申告決算書(不動産所得用)」、白色申告の場合は「収支内訳書(不動産所得用)」を作成します。
なお、詳しくは後述しますが、青色申告は節税メリットがある反面、損益計算書やその内訳、貸借対照表の作成が必要となるため、一定の簿記知識が必要です。一方、白色申告の場合は、収入や経費、減価償却費などを集計し、それぞれの項目に沿って記入していきます。
いずれも、国税局のWebサイトにある「確定申告書等作成コーナー」で作成できます。また書類は税務署の窓口でも入手できる他、国税庁のサイトからもダウンロードが可能です。確定申告ソフトや家計ソフトを利用する方法もあるため、ご自身に合った方法を選ぶと良いでしょう。
3. 確定申告書を作成する
続いて、作成した青色申告決算書または収支内訳書の内容を基に、確定申告書を作成します。
確定申告書も、決算書や収支内訳書と同様に、税務署での入手や国税庁のWebサイトからのダウンロード、先述した「確定申告書等作成コーナー」を利用しての作成が可能です。
なお、作成コーナーでは途中まで入力した内容を保存できるため、何回かに分けて作業を進めることもできます。
4. 申告・納税を行う
青色申告決算書または収支内訳書と確定申告書の作成が完了したら、税務署へ提出して申告を行います。提出方法は以下の3通りです。
● 税務署の窓口に持参
● 税務署に郵送
● e-Taxで電子申請
サラリーマン大家さんが活用すべき青色申告とは?メリットや注意点
前述の通り、確定申告には青色申告と白色申告の2種類があります。青色申告は、一定の要件を満たすことで、税制上の優遇を受けられる制度です。
手続きの手軽さでいえば白色申告の方がシンプルですが、サラリーマン大家さんが青色申告を選択すると、さまざまなメリットを得られます。ただし注意点もあるため、青色申告を選ぶ前に把握しておくことが重要です。
ここからは、青色申告のメリットと注意点について詳しく見ていきましょう。
青色申告のメリット
まずは、青色申告のメリットからご紹介します。
最大65万円の控除が受けられる
青色申告の大きなメリットは、最大65万円の控除が受けられることです(※1)。
青色申告で所得税を申告する場合、基本的には10万円の控除が適用されますが、一定の条件を満たすことで55万円もしくは、65万円まで控除額を引き上げられます(※1)。
それぞれ以下の要件があります。
【55万円控除】
● 不動産所得または事業所得がある
● アパート・マンションは10室以上、戸建ては5棟以上の貸付を行っている(※2)
● 複式簿記で帳簿を作成している
● 帳簿に基づいた貸借対照表と損益計算書を提出している
● 確定申告期限内に申告している
【65万円控除】
● 55万円控除の要件を全て満たしている
● 以下のいずれかを満たしている
1. 電子帳簿保存の要件を満たした仕訳帳および総勘定元帳を作成している
2. 確定申告書および添付書類をe-Taxで提出している
※ 1参考:国税庁.「No.2072 青色申告特別控除」 (2025-04-01).
※ 2参考:国税庁.「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」 (2025-04-01).
赤字を繰り越せる
確定申告を行った場合、不動産所得の赤字と給与所得の黒字を相殺できる「損益通算」が適用されるのは、前述した通りです。青色申告を選択すると、その年に出た赤字を3年間繰り越せて、翌年以降の黒字と相殺できます(※)。
初期投資が高額な不動産経営では、1年目が税務上マイナスになるケースが多いです。マイナス計上の年があっても、3年間繰り越して損益通算できるため、将来の所得を圧縮でき、節税効果を得られる可能性があります。
※参考:国税庁.「No.2070 青色申告制度」.”純損失の繰越しと繰戻し (2025-04-01).
家族への給与を経費にできる
青色申告を行うことで、一定の要件を満たせば、生計を同一にする家族へ支払う給与を「青色事業専従者給与」として経費に計上できます。
ただし、青色事業専従者として給与を支払う場合、その家族は配偶者控除や扶養控除の対象にはなりません。
なお、青色事業専従者給与には法律上の上限は設けられていませんが、実際の業務内容や労働時間に見合った妥当な金額であることが求められます。
※参考:国税庁. A1-11青色事業専従者給与に関する届出手続
青色申告の注意点
税制上のメリットが多い青色申告ですが、青色申告で確定申告する場合は事前に「所得税の青色申告承認申請手続」を行い、承認を受ける必要があります。要件を満たしていても、承認を受けていない状態ではメリットが得られないため、注意しましょう。
申請は、青色申告を行う年の3月15日までに、税務署への提出またはe-Taxで手続きを行います。ただし、その年の1月16日以後、新たに不動産の貸付をした場合は、開始日から2カ月以内に申請する必要があります(※)。なお、期限が土日祝に当たる場合は、翌日が提出期限です。
青色申告を希望する場合は、余裕を持って早めに手続きを進めておきましょう。
※参考:国税庁.「A1-8 所得税の青色申告承認申請手続」 (参照 2026-04-12).
サラリーマン大家さんには不動産管理会社の活用がおすすめ
サラリーマン大家さんにとって、確定申告は負担に感じやすい作業です。不動産経営をする場合、それに加えて日常的な建物管理や掃除、入居者対応なども発生するため、仕事と両立しながら全てを自分でこなすのは簡単ではありません。
そこでおすすめなのが、不動産管理会社やマンション管理会社の活用です。これらの専門会社を利用すれば、不動産経営に伴うさまざまな業務を任せられます。全ての業務ではなく、一部のみ委託することもできます。
なお、不動産管理会社を選ぶときは、事前に契約範囲や実績、サポート内容などをしっかりと確認しておくことが大切です。特にサラリーマン大家さんの場合は、トラブル発生時の対応の有無や範囲を十分にチェックしておくことをおすすめします。発生するコストとのバランスを見極めて不動産管理会社を利用し、効率的に不動産経営を進めましょう。
【まとめ】確定申告を正しく行いサラリーマン大家さんの節税効果を高めよう
不動産所得が20万円を超える際は、サラリーマン大家さんにも確定申告が義務付けられており、無申告の場合は追徴課税が課されることがあります。申告が面倒に感じるかもしれませんが、適切に経費計上すれば所得を圧縮でき、節税につながる可能性もあります。本記事を参考に正しく確定申告を行い、税負担を軽減しましょう。
仕事をしながら、確定申告に加えて日々の不動産管理を行うのは、かなり大変です。日々の負担を軽減したいなら、不動産管理会社の活用も検討しましょう。
株式会社中央ビル管理では、東京・埼玉・千葉で多くの不動産管理をサポートしています。不動産経営にお悩みを抱えている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。