ページタイトル背景

賃貸管理コラム

親が認知症になっても家の名義変更は可能?必要な手続きと対策を徹底解説

相続・不動産投資

2025.10.14

更新日 2025.10.16

親が認知症になっても家の名義変更は可能?必要な手続きと対策を徹底解説

親が認知症になった場合、家の名義変更は可能なのか、意思能力の有無による違いや活用できる制度、必要な対策を分かりやすく解説します。

親が認知症になった場合、家の名義変更ができるのかどうかは多くの家庭にとって大きな関心事です。名義変更の可否は、親に「意思能力」があるかによって大きく左右されます。意思能力とは、法律行為の内容を理解し、自分の判断で決定できる能力を指す言葉です。

本記事では意思能力の考え方や判断基準をはじめ、親が認知症になる前に備えておくべき対策、意思能力を失った後に利用できる成年後見制度の活用方法までを体系的に解説します。将来に向けて今できることをやっておきたいとお考えの方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。


賃貸管理委託おまかせプランの詳細はこちら!

親が認知症になっても家の名義変更は可能?

親が認知症になった場合、家の名義変更は大きな課題となるでしょう。不動産に関する法律行為を行う際は、所有者本人が内容を理解し判断できる「意思能力」を備えていることが前提となります。認知症の進行度が軽く、契約内容を理解できると認められる場合には対応可能なケースもありますが、症状が進んで判断が難しくなると、名義変更は原則できなくなります。

つまり親が認知症になり意思能力がないと判断された際は、家族が本人に代わって勝手に名義変更を進めることは原則認められていません。たとえ親のためを思った行動であっても、民法上無効となり(第三条の二)、後々問題となります。

こういった仕組みの影響で、家の名義変更ができずに不動産を空き家化させてしまったり、親族間の争いの原因となったりするケースもあるでしょう。売却して介護費用などに充てることができず、不動産という資産があるにもかかわらず家計に余裕がなくなってしまうようなケースも考えられます。将来の相続手続きの際に、家族間の調整が長期化する原因になる点にも注意が必要です。

※参考:e-Gov.「民法」(参照2025-09-08)

名義変更に欠かせない「意思能力」とは?

家の名義変更を行う際に重要となるのが「意思能力」です。意思能力とは、法律行為の内容や結果を理解し、自らの判断で取引を行える力を指します。例えば売買や贈与といった契約の内容を理解し、将来どのような影響があるのかを把握できる能力です。

意思能力の有無は、認知症の進行度によって変化します。認知症の症状が軽度で理解力が保たれている場合は、意思能力もあると判断されるケースもあります。しかし進行により内容を理解できなくなると、意思能力が欠けていると見なされ、先述の通り法律行為が無効になり、この段階で契約を結んでも成立しません。

単に本人が認知症と診断されたかどうかだけで判断されるのではなく、取引の場面で契約内容を理解できるかどうかが決め手となります。この点を正しく理解することが、今後の不動産管理や相続対策を考える上で不可欠です。

※参考:法務省.「意思能力制度の明文化」(参照2025-09-08)

不動産取引における意思能力の基準

不動産取引は特に金額が高額であり、判断の複雑さも伴うため、意思能力の基準が厳しく問われます。契約書に署名・押印できるだけでは不十分で、内容を理解しているかどうかを細かく確認することが求められます。

意思能力が正常かを判定する基準は、本人に自身の行動がもたらす結果やその意味を判断する能力があるかどうかです。また誤解や強制力が生じ正常に判断できていない場合、意思決定の自由がゆがめられていると判断されます。7~10歳と同等の内容が理解できていれば、意思能力があるとされるのが一般的です。

不動産取引においては、契約前に本人の状態を丁寧に確認し、必要に応じて専門家の意見を取り入れることが重要です。

※参考:公益社団法人 全日不動産相談センター.「高齢者の意思能力」(参照2025-09-08)


意思能力がなくなったときの備えとなる2つの対策

親が認知症になったことによって各種手続きが制限された状態になってしまうのを避けるには、意思能力があるうちに、将来を見据えた準備を行うことが欠かせません。

代表的な備えとして活用されているのが「家族信託」と「任意後見制度」です。いずれも親が認知症になる前の段階で契約を結ぶことで、将来判断力が低下した場合でも円滑に財産管理を続けられるようになる仕組みです。特に不動産の名義変更に関しては、これらの制度を使うことで、資産が動かせなくなるリスクを減らせるでしょう。

両制度は仕組みや特徴が異なるため、親の生活や家族の希望に応じて、どちらの制度を選ぶか検討することが大切です。それぞれの制度について詳しく解説します。

家族信託を活用する

家族信託とは、親が委託者として自らの財産管理を信頼できる家族(子など)に託す仕組みです。受託者となった人は、契約に基づいて不動産の管理や売却を行うことが可能になります。親が認知症により意思能力がないと判断される状態になった後でも、受託者が手続きを進められる点が大きな利点です。資産が凍結されることなく活用でき、空き家化や売却困難といったリスクを防ぐことにつながります。

また家族信託は後述する任意後見制度に比べて柔軟性が高く、契約内容を自由に設計できる点が特徴です。ただし設計を誤ると、相続時のトラブルや家族間の紛争を招く恐れもあります。契約の内容をどこまで細かく定めるか、どの財産を対象とするかなど、慎重な判断が欠かせません。

そのため、実際に利用する際は司法書士や弁護士などの専門家のサポートを受けながら進めることが重要です。専門的な助言を取り入れることで、リスクを回避しつつ制度を活用できるでしょう。

なお家族信託を始める際は、契約の作成や登記のために一定の費用がかかります。まず原則として「公正証書」で契約を結ぶため、公証役場での手数料が発生します。費用は信託財産の評価額に応じて変わり、数万円から数十万円程度となるのが一般的です。加えて、専門家への依頼費用も想定しておきましょう。

契約を進めるに当たっては、次のような書類をそろえるのが一般的です。

● 登記申請書
● 固定資産評価証明書
● 登記原因証明情報(公正証書で作成した信託契約書など)
● 不動産の登記済権利証または登記識別情報
● 信託目録に記載する情報(CD-Rなどに記録)
● 委託者と受託者の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)
● 委託者の印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
● 受託者の住民票
● 委託者の実印と受託者の実印または認印)


このように、家族信託の準備には多様な費用と書類が関わります。初期費用はかかりますが、あらかじめ仕組みを整えておくことで、将来的に円滑な財産管理を行う基盤を築けるはずです。

※参考:一般社団法人 家族信託普及協会.「家族信託とは?」(参照2025-09-08)

任意後見制度で将来に備える

任意後見制度は、財産の所有者が元気なうちに信頼できる候補者と契約を結び、将来判断能力が低下したときにその人が財産管理を担う仕組みです。親本人やその配偶者の他、四親等内の親族や任意後見人になる人が申立てを行えます。

この制度を使って任意後見人が不動産の名義変更を行う場合は、任意後見契約に基づいて手続きを進めます。家庭裁判所が任意後見監督人を選任し後見人の行為をチェックする体制を取るため、第三者の目が届く状態で財務管理を行える点が、任意後見制度の特長です。この点は、原則的には第三者が介入しない家族信託と大きく異なります。任意後見制度は任意後見人が完全に自由に行動できるわけではなく、監督人の確認を受けながらの運用となる制度といえます。

任意後見制度を活用すれば、親が認知症になった後もスムーズに不動産の管理や名義変更を進められる可能性があります。契約内容を工夫することで財産管理の範囲や方法を柔軟に設定できるでしょう。

ただしこの制度はあくまでも本人の財産や生活を保護するための制度であり、積極的な資産運用や本人の財産が減るような代理行為は原則認められません。任意後見人の判断で財産を処分することは認められておらず、不備があると無効や家族間の紛争につながる危険性もあります。そのため、任意後見制度を利用する際も専門家と相談し、信頼できる後見人を慎重に選ぶことが欠かせません。

申立てに必要な費用としては、まず家族信託と同じく「公正証書」で契約を結ぶため、公証役場での手数料が発生します。また申立手数料として収入印紙800円分が必要です。併せて連絡用の郵便切手も必要ですが、具体的な金額や種類は家庭裁判所ごとに異なるため、事前に確認しておかなければなりません。さらには、登記手数料として収入印紙1,400円分を用意する必要があります。認知症の進行度合いについて鑑定が必要と判断された場合は、鑑定費用も必要です。

申立ての際は、申立書をはじめとした複数の書類をそろえる必要があります。主なものは次の通りです。

● 任意後見契約公正証書の写し
● 本人の戸籍謄本(全部事項証明書)
● 成年後見等に関する登記事項証明書(法務局・地方法務局で発行)
● 本人の診断書(家庭裁判所が指定する様式によるもの)
● 本人の財産に関する資料(不動産登記事項証明書や固定資産評価証明書、預貯金・有価証券の残高証明など)


任意後見監督人の候補者がいる場合には、その人の住民票や戸籍附票などの提出も必要です。法人が候補者となる場合は、法人の登記事項証明書を添付します。

その他、家庭裁判所によっては財産目録や収支予定表、事情説明書など、独自に定められた書式の記入を求められることもあります。これらは裁判所のWebサイトに掲載されている場合もあるため、事前に確認しておくと準備をスムーズに進められるでしょう。

※参考:厚生労働省.「任意後見制度とは(手続の流れ、費用)」(参照2025-09-08)

意思能力があるうちに行える名義変更の方法

親に意思能力がある場合には、家の名義変更を進めることが可能です。代表的な方法としては、子や孫に家を譲る「生前贈与」をする方法と、第三者などへ売却する方法があります。いずれも契約が成立するためには、先述の通り本人が内容を理解し、合意することが条件となります。

ただし贈与や売却にはそれぞれ税金や諸費用が発生するため、注意が必要です。贈与では贈与税や不動産取得税、登録免許税などが生じ、売却では譲渡所得税などが生じる可能性があります。そのため、どちらを選ぶかは負担する費用の額と家族の将来設計を踏まえて慎重に判断することが大切です。

贈与する

親の意思能力がある間に行える代表的な方法が「贈与」です。これは親が存命の間に子や孫に不動産などの資産を譲る手続きで、相続を待たずに承継を進められる点が特徴です。相続トラブルを避け、親自身が決めた相手に不動産を渡すことができます。

※法務局:不動産登記の申請書様式について(参照2025-09-08)

※参考:国税庁.「【贈与税の申告等】」(参照2025-09-08)

売却(譲渡)する

親の意思能力があると判断される間には、家を売却(譲渡)することも可能です。売却は不動産会社を通じて市場に出すケースが一般的ですが、場合によっては子や孫に対して売却を行うこともあります。売却によって得られた資金は、介護費用や生活資金として活用できるのが大きな利点です。

売却は相続対策としても有効ですが、親がその家に居住している場合は新たな住まいの確保が必要です。この点を含め、家族で話し合いながら慎重に検討することが求められます。

※参考:法務局.「不動産登記の申請書様式について」(参照2025-09-08)

※参考:国税庁.「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」(参照2025-09-08)


贈与による名義変更の方法

贈与による名義変更では、まず親子間で贈与契約を結び、契約内容を記した贈与契約書を作成します。これは後日のトラブルを防ぐ上で重要な書類です。次に法務局で所有権移転登記を行い、正式に子の名義に切り替えます。

登記の際には贈与契約書の他、固定資産評価証明書、登記原因証明情報、親子それぞれの印鑑証明書や住民票といった書類が必要です。これらの書類をそろえ、法務局へ提出することで名義変更の手続きが進められます。

さらには税務署への贈与税の申告も必要です。基礎控除内であれば課税されない場合もありますが、課税対象となる場合は期限内に申告を行う必要があります。

なお本来であれば、贈与契約から一定の期間内に不動産が所在する都道府県に対し、不動産を取得した旨の申告をする必要もあります。ただし、その期間内に登記をした場合は申告不要としているところも多いです。細かなルールは管轄によって分かれます。

このように、不動産の贈与には登記や税務申告など複数の専門的手続きが関わります。そのため不動産を生前贈与すると決めた際は、専門家のサポートを受けるのがおすすめです。書類不備による手戻りを防ぎ、スムーズに名義変更を進められるでしょう。

※参考:法務局.「不動産登記の申請書様式について」(参照2025-09-08)

※参考:法務局.「○登録免許税の計算」(参照2025-09-08)

※参考:国税庁.「No.7191 登録免許税の税額表」(参照2025-09-08)

※参考:国税庁.「【贈与税の申告等】」(参照2025-09-08)

※参考:法務局.「不動産取得税」(参照2025-09-08)

※参考:東京都主税局.「不 動 産 取 得 税 申 告 の ご 案 内」(参照2025-09-08)


必要となる費用

不動産の贈与ではさまざまな費用が発生します。まず大きな負担となるのが贈与税です。贈与税は財産をもらった人(受贈者)に対し年間110万円の基礎控除を超える部分に課税され、税率は贈与額に応じて段階的に上がります。高額な不動産を贈与する場合、受贈者に相応の税負担が発生する点に注意が必要です。

なお贈与税には「相続時精算課税制度」という特例もあります。制度を活用することで、一定条件下では税負担を軽減できる可能性があります。ただし制度の利用には要件があり、長期的な相続計画に影響する場合もあるため、事前の確認が欠かせません。

また所有権移転登記に際しては、登録免許税がかかります。例外もありますが、基本的に標準税率は固定資産課税台帳における不動産の価額の2%で計算され、価額が高い場合は費用も大きくなる仕組みです。

加えて不動産取得税の対象にもなり、土地と住宅の場合、固定資産課税台帳における評価額の3%が課されます。しかし住宅用地特例の存在により、平均的な一戸建住宅であれば条件を満たして軽減措置が適用され、実質的には非課税となるケースが多いです。

これらの税金とは別に、手続きを依頼する司法書士や税理士への報酬も発生します。専門家費用は案件の内容や地域によって異なりますが、数万円から十数万円程度が一般的です。費用を節約するために自分で申請することも可能ですが、書類不備や税務リスクを考えると先述の通り専門家のサポートを受けるのがおすすめです。

贈与は相続トラブルの予防や承継の円滑化に役立つ一方で、費用負担が大きくなるケースもあります。早めに資金計画を立て、制度の活用を含めて検討することが、結果として将来のためになるでしょう。

売却による名義変更の方法

売却は金額が大きくなるため、不備なく取引を進めるには正しい流れを押さえておくことが重要です。

流れとしてはまず不動産会社に依頼し、物件の査定を受けた上で買主を探すのが一般的です。買主が決まったら売買契約を締結し、契約内容に基づいて代金の授受や所有権移転登記を進めます。

登記は譲渡の場合と同じく法務局で行い、必要書類として登記識別情報、印鑑証明書、固定資産評価証明書、本人確認書類などを提出します。これらがそろわなければ登記手続きは受理されないため、事前の確認が欠かせません。

売却に当たっては、契約書の不備や登記内容の誤りがトラブルの原因となることがあります。そのため、司法書士や宅地建物取引士などの専門家による手続きのサポートを受けるのが望ましいです。

※参考:法務局.「不動産登記の申請書様式について」(参照2025-09-08)

※参考:法務局.「○登録免許税の計算」(参照2025-09-08)

※参考:国税庁.「No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」(参照2025-09-08)

※参考:国税庁.「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」(参照2025-09-08)


※参考:国土交通省「建設産業・不動産業」(参照2025-09-08)

※参考:公益財団法人不動産流通推進センター.「不動産相談」(参照2025-09-08)

必要となる費用

不動産を売却して名義変更を行う場合も、複数の費用が発生します。大きな負担となるのが譲渡所得税です。これは売却によって利益が出た場合に課税されるもので、不動産の所有期間が5年を超える「長期譲渡」と5年以下の「短期譲渡」で税率が異なります。長期譲渡の場合は課税長期譲渡所得金額 × 15%、短期譲渡の場合は課税短期譲渡所得金額 × 30%となり、短期譲渡の場合は税率が高くなる仕組みです。売却のタイミングによっては税額が大きく変わる点に注意が必要です。

さらには登記手続きに伴う登録免許税も発生し、売主が負担するケースもあります。贈与の場合と同じく、基本的には固定資産課税台帳における不動産の価額の2%で計算されます。売買契約書には印紙税が課され、契約金額に応じた印紙を貼付しなければなりません。

その他、不動産会社などに仲介を依頼する場合は、仲介手数料も発生します。仲介手数料は宅地建物取引業法に基づき上限が定められており、一般的には売買価額 × 3.3% + 6万6,000円(税込)が上限です。この他、司法書士に登記を依頼する場合は報酬が数万円程度かかります。

こうした費用は合計すると想定以上に大きくなることがあります。そのため、売却を検討する際には事前に不動産会社や司法書士などから見積もりを取り、総額を把握しておくことが重要です。売却代金を介護費や生活費に充てられる利点は大きいものの、費用面や手続き上の注意点を踏まえて計画的に進める必要があります。

【贈与or売却】適切な選択をするには?

「贈与」と「売却」の2つの方法はそれぞれに特徴があり、どちらを選ぶかは家庭の状況や目的によって異なります。

繰り返しになりますが、贈与は生前に子や孫へ資産を承継できる点が大きなメリットです。
売却は、第三者に売却することで早期に資金を得られるため、親の療養や生活基盤を支える手段として有効です。

このように、贈与と売却のどちらが正しい選択かは一概にはいえません。家族の生活設計、親の介護方針、将来の相続を見据えながら検討することが大切です。

意思能力がなくなった後に利用できる「法定後見制度」とは?

それでは親がすでに意思能力を失っており、家族信託や任意後見制度の手続きを進めていなかった場合は、家の名義変更ができないのでしょうか。結論からいえば、本人による契約での名義変更はできませんが、正式な方法で代理人を立てられれば契約が可能となります。このような場合に利用されるのが「法定後見制度」です。


法定後見制度とは、家庭裁判所が成年後見人を選任し、その人が本人に代わって財産管理や契約行為を行う仕組み
です。成年後見人は対象者の財産を守りつつ、必要に応じて不動産の管理や売却を行えます。ただしその判断基準はあくまで「本人の利益」であり、家族の都合だけで自由に処分することはできません。

この制度を利用すれば、認知症によって資産が凍結される状態を防ぎ、介護費用や生活費を確保することが可能となります。親の生活を安定させるための有効な手段であり、意思能力を失った後の現実的な選択肢といえます。活用することで、資産を適切に管理できるでしょう。

※参考:厚生労働省.「法定後見制度とは(手続の流れ、費用)」(参照2025-09-08)

法定後見制度と任意後見制度

法定後見制度は「成年後見制度」の一種で、先述した任意後見制度と比較されることも多いです。先述の通り任意後見制度では、本人が元気なうちに契約を結んでおき、将来意思能力が低下したときに後見が開始されます。一方の法定後見制度は、すでに本人の意思能力が失われている場合に家庭裁判所が後見人を選任する制度です。

任意後見制度の大きな特徴は、本人が信頼できる人をあらかじめ後見人として指定できる点
にあります。これにより、家族や知人などに財産管理を任せることが可能です。ただし、後見人との契約は本人に意思能力がある段階でしか結べないため、早めの準備が欠かせません。

これに対して法定後見制度では、家庭裁判所が後見人を決定します。そのため後見人の選択肢の柔軟性には欠けますが、本人がすでに契約をできない状態でも利用できる点が大きな利点です。

つまり、任意後見制度は「将来を見据えて備えるための制度」、法定後見制度は「すでに意思能力を失った後に対応する制度」と位置づけられます。どちらを選べるかは親の現在の意思能力の有無や準備の有無によって変わるため、家族は両制度の違いを理解しておく必要があるでしょう。

成年法定後見制度の注意点

成年法定後見制度は、認知症で意思能力がなくなった人の財産を守る有効な仕組みですが、利用に当たってはいくつかの制約や注意点があります。

まず後見人は家庭裁判所の監督下に置かれ、財産管理を厳格に行います。不動産の売却や処分といった重要な取引を行うには裁判所の許可が必要であり、家族が自由に判断して進められるわけではありません。

また後見人に対する報酬も発生します。報酬額は家庭裁判所が決定し、ケースによって異なりますが、一般的には年間数万円から数十万円程度が必要です。さらに、この制度は本人が亡くなるまで続くことを原則としているため、一度利用を開始すると途中での解約や変更が難しい点を理解しておきましょう。

後見人に司法書士や弁護士といった専門職が選ばれた場合、家族が財産管理に関与できる範囲が制限されることもあります。加えて家庭裁判所への定期的な報告義務も課されるため、家族にとって心理的・事務的な負担が大きくなる点も押さえておくべきでしょう。制度を利用する前に仕組みを十分に理解し、将来どのような運用になるかを確認しておくことが重要です。

成年法定後見制度を利用する際の流れ

成年法定後見制度を利用する際の一般的な流れは、まず家庭裁判所への申立てから始まります。申立てができるのは、配偶者や子どもなどの親族に加え、市町村長も含まれます。

申立てに当たっては医師の診断書、戸籍謄本、住民票、財産目録などの書類が必要です。これらの資料を提出し、家庭裁判所が本人の状況を審理・面談によって確認します。その後、裁判所が適切な後見人を選任し、正式に後見が開始される流れです。後見人に選ばれた人は、裁判所の監督下で財産管理や契約行為、生活支援といった幅広い役割を担います。

意思能力がなくなった後に親の家を賃貸経営することは可能?

これまでご紹介した家族信託や任意後見制度、法定後見制度を使うと、認知症で意思能力がなくなった親の家の名義変更ができるだけではなく、賃貸に出して収益を得ることも可能です。

家族信託をあらかじめ結んでおけば、受託者となった子どもが貸主となり、契約や管理を担うことが可能です。家賃収入は受益者である親に帰属し、生活費や介護費用に充てられます。

また親が意思能力を持っているうちに任意後見契約を結んでおけば、将来、本人が意思能力を失った際に任意後見人が財産管理を引き継ぎ、賃貸経営に関わる判断を行うこともできます。

親がすでに意思能力を失っている場合には、成年後見制度を利用し、後見人が裁判所の監督下で賃貸経営を代行することが可能です。あくまで財産保全のために限られ、利益獲得を目的とした財産管理は認められない可能性が高い傾向にありますが、不動産を収益化する方法としては一定の有効性があります。

【まとめ】

親が認知症になった後の家の名義変更は、本人の意思能力の有無によって大きく制限されます。早めの備えとしては家族信託や任意後見制度などが有効であり、意思能力があるうちであれば贈与や売却による名義変更も可能です。意思能力を失った後は、成年後見制度を利用すれば契約や手続きを進められます。

これらの方法は、家庭の状況によって選ぶべきものが変わってくるため、専門家に早めに相談するのがおすすめです。専門家と連携しながら計画を立てれば、資産を守りつつ家族の負担を大きく減らせるでしょう。

不動産の管理や相続に関するサポートをお求めの方は、中央ビル管理にお任せください。ご相談の段階から丁寧に対応いたしますので、制度や税制の複雑さに不安を感じている方でもお気軽にご利用いただけます。名義変更をはじめとした不動産に関するお悩みをお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。

監修

(株)中央ビル管理 取締役 江本 昌央氏

所属/(株)中央ビル管理取締役 業務管理部部長 
保有資格/ 宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士

コンテンツ制作ポリシー
記事一覧に戻る