相続マンションの税金はどれくらいかかる? 相続前に確認しておきたい点や相続後の物件の使い道を解説
相続・不動産投資
2026.09.02
更新日 2026.09.03
相続マンションは、活用次第では負の資産になるリスクもあるため、相続時の注意点や相続税について正しい知識を学んでおくことが大切です。
本記事では、マンションを相続する際に注意したい点や、確認しておきたいポイント、相続税や維持コストの基礎知識、マンションを相続するか否かの選択肢について解説します。
相続マンションを賃貸経営する場合の管理会社の重要性やトラブル回避のコツなどもまとめているため、マンション相続について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
マンションを相続する際の5つの注意点と確認ポイント
マンションを相続する際の注意点や、事前に確認すべきポイントは大きく分けて5つあります。
● 遺言書の確認
● 権利関係の確認
● 物件の状態確認
● 契約状況の確認
● 管理費・修繕積立金・固定資産税などの確認
まずはそれぞれのポイントについて詳しく解説します。
遺言書の確認
被相続人が遺言書を残していないかどうかを確認しましょう。遺言書は法的効力を持つため、原則としてその内容通りに相続登記を申請することになります。
なお、遺言書は作成方法によって以下3つに分類されます。
■自筆証書遺言 遺言者が自筆で作成した遺言書
■秘密証書遺言 遺言書の内容を秘密にし、その存在のみを公証役場で証明してもらう遺言書
■公正証書遺言 遺言者が証人に遺言の内容を口授し、公証人が作成する遺言書
このうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言の2つは家庭裁判所に提出し、検認を受ける手続きを行わなければなりません。この際、遺言内容の改ざん予防として未開封の状態で提出する必要があるため、遺言書を見つけても勝手に開封しないよう注意しましょう。ただし、法務局で保管していた自筆証書遺言書は検認が不要です。
公正証書遺言の場合は、公証役場で保管し、公証役場に出頭することなどで内容の確認や謄本の取得ができます。(※)
※参考:日本公証人連合会.「2遺言」 (参照2026-04-22)
※参考:裁判所.「遺言書の検認」 (参照2026-04-22)
※参考:法務局.「自筆証書遺言と公正証書遺言の違い」(参照2026-04-22)
権利関係の確認
登記名義人が親だけであれば、相続に伴う登記手続きは比較的簡単に済みます。しかし被相続人の配偶者や他の親族と共有名義になっていた場合、相続の対象となるのは被相続人の共有部分のみです(※)。法務局で登記事項証明書を取得し、相続マンションの登記名義人を調べてみましょう。
共有部分のみを相続人同士でさらに分割した場合、権利関係が複雑になるため、相続を機に共有名義から単独名義への変更も検討した方が良いでしょう。
なお、共有名義の場合の持分割合は、登記事項証明書で確認できます。
※参考:e-Gov法令検索.「民法」.“第二百五十五条(参照2026-04-22)
物件の状態確認
相続マンションの築年数や建物の劣化状況によっては、相続後に大規模な修繕や多額の維持費がかかる可能性があるため、物件の状態も入念にチェックしておくことが大切です。
特に、築年数が経過しているマンションは外壁や配管などの劣化が進み、大がかりな修繕が必要になる可能性があります。
長期修繕計画書や、これまで実施した修繕履歴などをチェックし、今後どのような修繕・費用が発生するか確認しておきましょう。
契約状況の確認
相続マンションに入居者がいる場合は契約状況の確認も必要です。相続人がそのまま貸主として賃貸経営を続ける場合は、入居者に対してオーナーが変わったことを通知する必要があります。一方、相続マンションを取り壊すことを前提として物件を売却するのなら、立ち退きを求めなければなりません。
立ち退きを求める場合、普通建物賃貸借契約では、契約期間満了の1年前から6カ月前までの間に更新しない旨を通知する必要があります(※)。また、貸主からの更新拒絶や解約には、正当事由が必要です。通知を行わない場合、現在有効な契約と同一の条件で契約を更新したものと見なされ、売却が困難になる可能性があります。
なお、相続に伴う更新拒絶や解約の申し入れは貸主都合となるため、一般的には入居者に対して立ち退き料を支払うことになるでしょう。
※参考:e-Gov 法令検索.「借地借家法(平成三年法律第九十号)」 (2020-04-01).
管理費・修繕積立金・固定資産税などの確認
被相続人がマンション区分所有者だった場合は、専有部分について発生するメンテナンス費(床や壁、専有部分の配管の修繕など)や修繕積立金、固定資産税といった維持費の確認が必要になります。
管理費・修繕積立金は毎月、固定資産税は毎年の支払いとなるため、これらの費用を負担してまで物件を所有したいか否かが焦点となります。
なお、上記の費用は、基本的に発生するものと考えるべきです。たとえ空室だったとしても負担し続ける必要がある点に注意しましょう。
区分所有マンションを相続するときに知っておきたい相続税の計算方法
他の相続財産などを含めた課税価格の合計額が基礎控除額を超えると、相続税がかかります。相続税は、被相続人が死亡したことを相続人が知った日の翌日から10カ月以内に申告・納税する必要があります。そのため実際に相続が発生してからではなく、事前に計算方法を知っておいた方がよいでしょう(※)
ここでは、一般的な居住用の区分所有マンションを相続した場合の税金の計算方法について説明します。
なお、入居者がいる賃貸物件や投資用マンションについては、異なる評価ルールが適用される可能性があるため、個別の判断が必要です。
※参考:国税庁.「No.4205 相続税の申告と納税」 (参照2026-04-22)
マンションの相続税評価額の調べ方
マンションの相続税を計算するには、まず相続税評価額を調べる必要があります。相続税評価額とは、相続税や贈与税を申告する際に用いられる基準のことです。
相続税評価額は土地・建物のそれぞれで計算する必要があり、土地の場合は路線価方式または倍率方式のいずれかを使用します。路線価方式は、国税庁が毎年7月に公表する路線価を基に計算する方法で、計算式は以下の通りです(※1)。
「路線価 × 画地補正率 × 地積(面積)」
画地補正率とは、その土地の奥行きや形状、利用上の法的制限等画地の現状に合わせて補正を行うために用いられる倍率のことです。路線価図では、ビル街地区、繁華街地区、普通住宅地区など、そのエリアの性質によって7つの地区区分が設定されています。
国税庁が公開している「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」を確認し、各地区区分と奥行きの距離や間口距離などの条件に応じた補正率をチェックしておきましょう(※2)。
一方の倍率方法とは、路線価がない地域にある物件の相続税評価額を計算するときに用いる方法です。倍率方式では、エリアごとに定められた評価倍率に、その土地の固定資産税評価額を乗じて相続税評価額を計算します(※3)。
なお、路線価および評価倍率は、国税庁が運用している路線価図・評価倍率表のWebサイトにて調べられます。また建物の相続税評価額は固定資産税評価額と同じです。固定資産税評価額は、建物の所在地の市町村から送付される納税通知書で確認できます。
※1 参考:国税庁.「No.4604 路線価方式による宅地の評価」 (参照2026-04-03).
※2 参考:国税庁.「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」 (参照2026-04-03).
※3 参考:国税庁.「No.4606 倍率方式による土地の評価」 (参照2026-04-03).
マンション区分所有の場合の計算方法
マンション区分所有の場合は、土地や建物全体ではなく、専有部分や敷地利用権の相続税評価額を計算します。まず、土地・建物全体の相続税評価額に持分割合を乗じて専有部分および敷地利用権の価額を計算します。
土地の持分割合は、登記事項証明書などで確認できます。
専有部分および敷地利用権の価額については、令和6年1月1日以後に相続・遺贈などで取得した居住用の区分所有財産について、一定の場合に区分所有補正率による補正を行います。区分所有補正率は、評価乖離率や評価水準などを用いて算定されます(※)
区分所有補正率は、評価水準が一定数を超えるかどうかによって2つに分けられています。また0.6以上1以下の場合は適用となりません。なお、区分所有補正率や評価乖離率、評価水準の求め方は国税庁のWebサイトで詳しく説明されているため、そちらを参考にしてください。
※参考:国税庁.「居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)」 (2023-09-28).
マンションの相続税の計算方法
マンションの相続税を計算するに当たって注意しなければならないのは、相続税はマンション単体の取得額だけで決まるものではなく、相続した財産全体をもとに計算されることです。
例えば、マンション以外に預金や有価証券なども相続した場合は、それらも含めた取得金額に対して相続税が課せられます。
なお、法定相続分は民法の定めに基づき、課税遺産総額を分割して計算します。民法に定める法定相続分は、以下の通りです(※1)。
【配偶者と子どもが相続人の場合】
配偶者1/2、子ども1/2(子ども2人以上の場合は全員で1/2)
【配偶者と直系尊属が相続人の場合】
配偶者2/3 直系尊属1/3(直系尊属が2人以上の場合は全員で1/3)
【配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合】
配偶者3/4 兄弟姉妹1/4(兄弟姉妹が2人以上の場合は全員で1/4)
一方、課税遺産総額を求めるには、正味の遺産額から以下の計算式で算出した基礎控除額を差し引く必要があります(※2)。
「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 = 基礎控除額」
例えば、法定相続人が妻と子2人だった場合、3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円が正味の遺産額から控除され、残りが課税遺産総額です。もし正味の遺産額が基礎控除を下回った場合は、相続税の納税義務は発生しません。
課税遺産総額が確定したら、民法に基づいて法定相続分を決め、以下の速算表を用いて相続税を計算します(※2)。
【法定相続分に応ずる取得金額】 【税率】 【控除額】
1,000万円以下 10% -
1,000万円超〜3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超〜5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超〜1億円以下 30% 700万円
1億円超〜2億円以下 40% 1,700万円
2億円超〜3億円以下 45% 2,700万円
3億円超〜6億円以下 50% 4,200万円
6億円超〜 55% 7,200万円
例えば、相続マンションを含む法定相続分が2,000万円だった場合、相続税は2,000万円 × 15% - 50万円 = 250万円です。
※1 参考:国税庁.「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」 (参照2026-04-03)
※2 参考:国税庁.「財産を相続したとき」(参照2026-04-03).
相続したマンションをどうする? 3つの選択肢を解説
相続したマンションをどうするかの選択肢は、大きく3つに分かれます。
● 自分で住む
● 人に貸す
● 売却する
以下では、それぞれの選択肢について詳しく解説します。
自分で住む
区分所有のマンションを相続した場合、自分で住むという方法があります。元々そのマンションに親と同居していたのなら、引っ越しの手間を省ける上、生活環境を変えずに済むでしょう。
また家族との思い出が残るマンションを所有し続けられるという心理的なメリットもあります。
ただし、管理費や修繕積立金、固定資産税や都市計画税などは自分で負担しなければなりません。さらに、相続税の納税が必要な場合は、自分の貯金や相続した資産からまかなう必要がある点にも注意が必要です。
人に貸す
相続したマンションを賃貸に出せば、家賃収入を得られます。「他に住居があるから相続マンションに住めない」「職場から遠くなるから引っ越せない」といった理由で相続マンションを持て余す場合、賃貸物件として第三者に貸した方が資産を有効活用できるでしょう。
入居者がいれば、定期的に掃除や換気などを行ってくれるため、物件が傷みにくいというメリットもあります。
一方で、物件の劣化が進んでいる場合は、賃貸に適した状態にするために修繕やリフォームなどを行わなければなりません。また賃貸に出しても入居が確約されているわけではなく、長らく空室状態になるリスクもあります。空室の期間中は維持費や税金を自分で負担しなければならないため、コストが増大する恐れがあります。
さらに、賃貸マンションを一棟相続した場合は、廊下やエントランス、駐車場といった共用部分の管理も行わなければなりません。物件が遠方にある場合は、自分で管理するのは難しいため、信頼できる管理会社に任せる必要があるでしょう。
なお賃貸マンションとして所有する場合は、固定資産税や都市計画税に加え、利益がある場合は不動産所得に対する所得税・住民税を納める必要があります。堅実な運用をしている場合、これらの税金を納めていてもプラスになりますが、収支がマイナスの場合は空室リスク対策などに注力しなければならないでしょう。
売却する
自分で住む予定がなく、物件を運用するのも難しいという場合は、相続マンションを売却するという手段もあります。マンションを相続すれば売却金を得られる上、維持費や納税の負担もなくなるため、経済面で大きなメリットを得られる可能性があります。
ただし、物件の立地や老朽化の状態などによっては希望の価格で売れないこともあるため、注意が必要です。また売却できた場合も、売却金から取得費や譲渡費用を差し引いて求めた課税譲渡所得額に対して譲渡所得税が課せられるため、想定していたよりも手元に残る金額が少なくなったり、あるいは売却損になったりする可能性があります(※)。
※参考:国税庁.「土地や建物を売ったとき」 (参照2026-04-06)
相続したマンションを放置するのはNG
ここまで相続マンションの活用法を3つご紹介してきましたが、最もやってはならないのは相続物件をそのまま放置することです。
マンションは所有しているだけでも固定資産税や維持費、管理費などが発生するため、空室のまま放置していると無駄なコストがどんどんかさんでしまいます。
また誰も住んでいない部屋は掃除や換気が行われない分、劣化が進みやすいです。しばらくして人に貸したり、売却したりしようとしても借り手や買い手が付きにくくなることも考えられます。
相続放棄という選択肢もある
自分で住むことができず、かつ賃貸も売却も難しい場合は、相続放棄を検討するのも一つの方法です。
相続放棄とは、その名の通り、相続する権利を放棄することです。相続放棄をすると、原則として被相続人の財産や債務を相続しまないため、相続税や固定資産税などを納める必要はなくなります。ただし、相続放棄後の財産の管理については、状況に応じて対応が必要となる場合があります。
貸すことも売ることもできないマンションは、負の遺産になる可能性が高いため、思い切って相続を放棄した方が経済面の負担を軽減できる場合もあるでしょう。ただし、相続権は資産ごとに放棄できるものではなく、相続放棄する場合は、マンションを含む全ての資産の相続を諦めなければなりません。
一度相続放棄の手続きを行うと、原則として取り消しはできないため、慎重に検討する必要があります。ただし、相続放棄の申し立ては、相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内にしなければならないというルールがあります(※)。
相続の開始、つまり被相続人が亡くなってから相続するかどうかを決めようとすると、十分に検討できず、後悔する可能性があります。そのため、もし親がマンションを所有しているのなら、相続が始まる前から「相続マンションをどうするのか」を考えておくことをおすすめします。
※参考:裁判所.「相続の放棄の申述」(参照2026-04-06).
【まとめ】マンションを相続する際の注意点や、物件の活用法をあらかじめ押さえておこう
親からマンションを相続する際は、遺言書の有無や権利関係、物件の状態などをあらかじめ確認しておくとともに、相続税の計算も行っておく必要があります。その上で、相続の可否や物件の活用法を検討することになりますが、物件の立地や状態、将来的な収支などを踏まえて、賃貸・売却などの活用方法を検討することが大切です。
ただし、物件の管理業務を担う必要があるため「遠方で物件まで足を運べない」「物件の管理をする時間がない」という場合は、信頼できる管理会社に管理業務を委託することをおすすめします。
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