未登記物件を相続した場合のリスクは? 相続したらやるべきことを分かりやすく解説
相続・不動産投資
2026.08.25
更新日 2026.08.25
「親から相続した不動産について調べたら、実は未登記物件だった」という場合、将来的にさまざまなリスクが生じる可能性が高くなります。中には法に基づく罰則も含まれるため、未登記物件を相続したら、早めに然るべき措置を講じましょう。
本記事では、未登記物件に関する基礎知識と、未登記物件を相続する際に懸念されるリスク、未登記物件を相続する際の流れをまとめました。
目次
未登記物件とは?基礎知識と見分け方
未登記物件とは、不動産登記の表題部の登記がない建物のことです。不動産登記を行うと登記事項証明書(登記簿謄本)が作成されますが、その内容は大きく分けて表題部と権利部の2つがあります。
【表題部】
■土地/所在、地番、地目、地積など
■建物/所在、家屋番号、種類、構造、床面積など
【権利部】
■甲区/所有権に関する事項。登記の目的、受付年月日、所有者の氏名・住所、登記の原因など
■乙区/所有権以外の権利に関する事項。登記の目的、原因、債権額、債務者など
不動産登記法では、次の条件に合致するケースで、所有権を取得した日から1カ月以内 に表題登記を申請することが義務づけられています(※)。
● 新たに生じた土地、またはまだ表題登記のない土地の所有権を取得した人者
● 新築した建物や、区分建物以外のまだ表題登記がない建物(マンションなどの区分建物を除く)の所有権を取得した人者
つまり、不動産を取得したにもかかわらず表題部の登記を行わないのは不動産登記法違反に当たります。しかし、実際には未登記物件が複数存在しているのが実状です。
※参考:e-Gov法令検索.「不動産登記法」.,(参照2026-04-23).
未登記物件が存在している理由
法律で登記が義務づけられているにもかかわらず、未登記物件が存在している理由は主に3つです。
● 住宅ローンを利用せずに物件を取得した
● 不動産登記の存在そのものや、義務であることを知らなかった
● 増改築の登記を忘れていた
住宅ローンを利用すると、貸し倒れ防止のために、原則として抵当権設定登記を行われます。また抵当権設定登記は不動産登記の一種であるため、住宅ローンを利用すれば問題なく不動産登記が行われます。
しかし、住宅ローンを利用せずに現金一括払いで住宅を取得した場合、物件の取得者が自主的に申請しないと登記は行われません。もし物件の取得者が不動産登記そのものの存在を知らなかった、あるいは義務であることを知らず「面倒だから」と放置した場合、その物件は未登記のままになります。
実際、物件を相続するにあたって初めて発覚したというケースもあるようです。また増築部分の登記を忘れていたという事例もあります。
不動産登記法では、増築などで建物の状況が変わった表題部に変更があった場合、当該変更があった日から1カ月以内 に変更登記を申請することを義務づけています(※)。
建物の構造や床面積が変わった表題部には付属建物の構造や床面積も含まれるため、増築を行った場合は速やかに登記変更手続きを行うことが大切です。増築部分の登記を怠った場合、母屋は登記済みなのに敷地内にある離れは未登記という事態に陥ることもあります。
※参考:e-Gov法令検索.「不動産登記法」./ ,(参照2026-04-24).
未登記物件を見分ける方法
相続した物件が未登記かどうか確認する方法は2つあります。
1つ目は、固定資産税の課税明細書に記載されている家屋番号を確認する方法です。家屋番号とは登記簿に登記されている番号で、もし空欄だった場合は未登記と判断できます。
ただし、自治体によっては市が独自に割り振った管理番号や、0-0-0-0など任意の番号が記載されていることもあるため、自治体ごとの課税明細書の見方をあらかじめチェックしておきましょう。なお、課税明細書は毎年自治体から送付される固定資産税納税通知書に同封されています。
2つ目の方法は、前述した建物の登記事項証明書の交付を請求することです。交付請求しても登記事項証明書を取得できなかった場合、その物件は未登記であると考えられます。登記事項証明書は法務局の窓口で手続きするか、あるいは郵送手続きやオンライン手続きでも請求可能です。
急ぎの場合は即日交付してくれる窓口手続きがおすすめですが、急がない場合は手間がかからないオンライン手続きを利用するとよいでしょう。オンライン手続きは法務局のWebサイトから行えます。
「固定資産税が課税されている=登記されている」ではない
未登記物件かどうかを確認する際に注意したいのは、固定資産税が課税されている=登記物件であるとは限らないことです。
なぜなら、固定資産税の課税対象となる物件の有無は、登記情報だけではなく、自治体が行う家屋調査などに基づくためです(※)。
本来は法務局からの通知によって固定資産を把握するのが一般的ですが、家の新築や増改築を行うと、役場は固定資産税の課税対象になる不動産を評価するために調査を実施する決まりになっています。自治体はこの調査の結果に基づいて固定資産税を徴収するため、未登記であっても納税の義務は発生します。
「固定資産税納税通知書が毎年来ているから登記もされているだろう」という誤った認識を持っていると、いざ相続したときに未登記だったことが発覚することもあり得るため、注意が必要です。
※参考:e-Gov法令検索.「地方税法」. ,(参照2026-04-24).
※ 参考:e-Gov法令検索.「地方税法」. ,(参照2026-04-24).
未登記物件を相続する際のリスクと注意点
未登記物件を相続した場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
罰則の対象になる
前述したように、不動産登記は法律によって義務化されているため、未登記物件を相続・所有すると罰則の対象となります。具体的には不動産登記法第47条違反として、同法第164条の規定の下、10万円以下 の過料に処されることがあるでしょう(※)。
※参考:e-Gov法令検索.「不動産登記法」. ,(参照2026-04-24).
物件を売却しづらくなる
未登記物件を売却することは不可能ではありませんが、登記済みの物件に比べると買い手が付きにくい傾向にあります。
売り手がその物件の所有者であることを第三者に証明できず、買い手側から「詐欺ではないか」と不審に思われるリスクが高いためです。物件を購入後、買い手自らが登記を行うという方法もありますが、登記には相応の手間と費用がかかります。
また未登記物件では、住宅ローンを組めないというのも買い手側にとって大きな壁になります。「未登記物件が存在している理由」でも説明した通り、抵当権設定登記は不動産登記の一種であるため、そもそも未登記であった場合は設定そのものを行えません。抵当権設定登記ができない物件は貸し倒れのリスクが高くなり、住宅ローンを組むのはほぼ不可能であるため、買い手に敬遠される可能性が高いでしょう。
上記のようなリスクのある未登記物件の購入希望者を探すのは非常に難しいため、スムーズに売却できないと考えておいた方がよいでしょう。
相続時の手続きが複雑になる
相続した未登記物件をそのまま放置すると、将来的に子や孫に相続する際、手続きが通常より複雑になります。
未登記物件を相続する場合、まずその物件が本当に被相続人の所有物であるかどうかを確認するところから始めなければなりません。登記済みの場合、登記事項証明書の交付申請だけで済みますが、未登記の場合は固定資産税納税通知書や建築確認関係書類、売買契約書といった書類を基に、所有者を特定する作業が必要になります。
また不動産の遺産分割の選択肢が狭まってしまうのも大きな問題です。不動産の遺産分割には主に4つのパターンがあり、それぞれ特徴が異なります。
【換価分割】 不動産を売却して得たお金を分配する
【代償分割】 特定の相続人が不動産を相続し、超過分を代償金として他の相続人に分配する
【現物分割】 不動産などの財産をそのままの形で特定の相続人が取得する
【共有分割】 一つの不動産を相続人全員の共有名義にする
比較的トラブルになりにくいのは現金で分配できる換価分割ですが、前述したように未登記物件は買い手が付きにくいため、スムーズに遺産分割できない恐れがあります。代償分割も比較的トラブルになりにくい手段ですが、その不動産を相続する人が代償金を支払えない場合は利用できません。
現物分割は「長男が未登記建物をそのまま取得し、次男が預貯金を取得する」といった形であれば可能です。しかし、一般的な一つの家屋を複数人で物理的に分割することが困難なため、実質的に現物分割を選ぶことは難しいでしょう。
一方、共有分割は将来的に売却や建て替えなどを行う際、都度相続人全員の同意を得る必要があります。そのため使い勝手が悪く、管理を巡って相続人同士でトラブルの火種になることも考えられます。
このように、未登記物件は相続時や遺産分割時における手続きが複雑になる上、場合によってはトラブルのリスクが生じることから、子や孫に負担をかける可能性が高いでしょう。
未登記物件を相続する際に行うべきこと
前章で説明したリスクを回避したいのなら、未登記物件を相続する際に、以下のようなステップで相続物件を登記する必要があります。
1. 未登記物件の所有者を明確にする
2. 未登記物件の価値を評価する
3. 遺産分割協議を行う
4. 表題登記を行う
5. 所有権保存登記を行う
ここからは、それぞれのプロセスについて詳しく見ていきましょう。
未登記物件の所有者を明確にする
「相続時の手続きが複雑になる」でも説明したように、まずは未登記物件の所有者が本当に被相続人であるかどうかを確認します。被相続人が遺した書類や身内などへのヒアリングを基に、所有者の特定に努めましょう。
なお、建物部分のみが未登記だった場合、法務局で土地の登記事項証明書を取得するという方法もあります。
土地と建物の所有者が同じケースが多いため、そこからヒントを得られることがあります。
ただし、借地の上に建っている家など、土地と建物の所有者が異なるケースもあるため、土地の登記事項証明書だけで建物の所有者を安易に断定することはやめた方がよいでしょう。
未登記物件の価値を評価する
未登記物件が被相続人のものであることが明らかになったら、相続に向けて未登記物件の価値を評価します。
遺産分割における不動産の評価方法には、不動産鑑定士や不動産業者による鑑定・査定額を基準にする方法と、固定資産評価額を基準にする方法の2パターンがあります。固定資産評価額は固定資産税の課税明細書で確認できるため、手間やお金をかけずに済むところが利点です。ただし、固定資産評価額と、実際に不動産売買が行われたときの市場価格(実勢価格)ではずれが生じます。
その点、不動産鑑定士や不動産業者は実地調査を行った上で、物件の個別事情を反映した鑑定・査定を行うため、市場価値が反映されやすいというメリットがあります。実勢価格により、近い評価の方が、他の相続人の納得や同意を得やすいでしょう。
遺産分割協議を行う
評価後は相続人全員で遺産分割協議を行い、未登記物件を含む相続財産の分割方法を決めましょう。
話し合いで分割方法が決まったら、遺産分割協議書を作成します。未登記物件の場合は登記事項証明書を参考にできません。そのため、その物件が所在する市区町村の役場で取得した固定資産評価証明書を基に、正確な所在や種類、構造、床面積といった必要事項を記載することになります。なお、家屋番号の欄には「未登記建物」と記載するのが一般的です。
また注釈として「未登記建物につき固定資産税評価証明書参考」といった一文を添えておくと、何を参考に遺産分割協議書を作成したのか分かりやすくなるでしょう。
表題登記を行う
遺産分割協議書を作成したら、未登記物件の表題登記を行います。表題登記はその物件の所在地を管轄する法務局で申請しますが、その際は以下の書類を用意する必要があります。
● 表題登記申請書
● 建物図面・各階平面図
● 所有権を証明する書類証明書(固定資産評価証明書税の納付証明書など)
● 被相続人の戸籍謄本
● 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
● 遺産分割協議書
表題登記申請書は必要事項を記入した申請書を自作するか、あるいは法務局の登記・供託オンライン申請システムを利用して行うのが一般的です。なお、表題登記は土地家屋調査士に依頼することも可能です。
所有権保存登記を行う
表題登記を行ったら、続いて所有権保存登記を行います。手続きの流れは前述した表題登記と同じですが、申請書の様式は法務局のWebサイトでダウンロード可能です。
所有権保存登記では、原則として申請人(相続人)の「住民票の写し」などを添付する必要があります。ただし、申請書に住民票コードを記載した場合は、住民票の写しの添付を省略することが可能です。 また代理人に登記手続きを委託する場合は「委任状」が必要になります。
【まとめ】未登記物件を相続したら表題登記や所有権保存登記を行おう
不動産は取得してから一定期間内に登記することを義務づけられているため、相続した物件を未登記のままにすることは適切ではありません。
法的に問題があるだけではなく、買い手が付きにくい、相続の手続きが複雑になるといったデメリットもあるため、未登記物件を相続することになったら速やかに表題登記および所有権保存登記を行いましょう。
なお、相続した物件が賃貸物件だった場合は、各種登記手続きを行った上で、運用について不動産仲介業者や不動産管理会社に相談することをおすすめします。
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