不動産投資の雑費とは? 大まかな目安や雑費の科目、計上時の注意点を解説
相続・不動産投資
2026.08.19
更新日 2026.08.20
不動産投資で得た収益を大きくするには、投資に用いた経費を正確に把握し、適切に計上することが重要です。
経費にはさまざまな科目がありますが、中でも雑費は他の科目に比べると具体的なイメージが湧きにくく「どのような費用が雑費に該当するのか分からない」という人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、不動産投資における経費の基礎知識や、雑費として計上できるもの、雑費を計上する際の注意点、不動産投資の雑費に関するよくある質問などについてまとめました。不動産投資を始めたばかり、あるいはこれから始める予定で「雑費の計上の仕方がいまいち分からない」とお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
目次
そもそも雑費とは? 経費に関する基礎知識
雑費とは、事業上の費用のうち、他の経費に当てはまらない費用のことです。
事業を営む法人または個人は、税務申告を行うために事業所得や不動産所得、雑所得を計算しますが、その計算式では総収入金額から経費を差し引く必要があります。ここでいう経費とは、以下2つに該当する費用を指します。
● 総収入金額に対応する売上原価や、収入を得るために直接要した費用
● その年に生じた販売費や一般管理費、その他業務上の費用
以上2点に該当する経費は複数ありますが、不動産投資の場合、主に経費として計上できるのは次のような科目です。
【租税公課】事業税や固定資産税、不動産取得税、登録免許税などの税金(一定規模以上の場合は事業税も含む)
【地代家賃】不動産事業に関連する事務作業を行っている場所に支払う家賃など
【水道光熱費】経営する不動産の共用部分の水道代、電気代など
【旅費交通費】物件を閲覧・管理するために使用した電車代、バス代、タクシー代などの交通費や宿泊費など
【通信費】管理会社などと通話した場合の電話代や、入居者に書類を送付した場合などにかかる郵送代など
【広告宣伝費】入居者募集にかかった費用など
【接待交際費】不動産管理会社(マンション管理会社)や顧問税理士との飲食など、事業を営む上で必要と認められる金額
【損害保険料】火災保険や地震保険など、建物の損害を補償する保険の費用
【修繕費】建物や設備の修繕や、原状回復費用など
【消耗品費】管理業務に使用するパソコンなど、不動産経営業務に使用する少額な消耗品の購入費
【減価償却費】建物部分や設備の購入費を耐用年数に応じて分割計上したもの
【利子割引料】建物を購入するためのローン(借入金)の利息など
【貸倒金】家賃を回収できないと判断された場合の損失額
【立退料】賃借人に立ち退いてもらうために支払う費用
【税理士などの報酬】不動産の登記手続きや確定申告などを士業に依頼した場合にかかる報酬
このように経費は細かく分類されていますが、中には上記のいずれにも該当しない費用が発生することもあります。これが雑費です。
広義では雑費も経費の一部といえますが、原則として上記の経費科目に仕訳できる費用は雑費として計上できないため注意が必要です。
不動産投資における主な雑費の例
では、不動産投資ではどのような費用が雑費として計上できるのでしょうか。ここでは、不動産投資における主な雑費の例をまとめました。
● 交通費
● 通信費
● 接待交際費
● 消耗品費
● 新聞図書費:不動産経営に関する専門書などの購入費
● 研修費:不動産経営について学ぶために参加したセミナー代など
新聞図書費と研修費以外は、前章で説明した経費の科目に含まれていますが、単発かつ少額の出費はあえて細かく仕訳せず、雑費として計上することもあります。
例えば、物件を内覧するために自宅から現地まで公共交通機関を使用し、往復で1,000円の交通費がかかったとしましょう。このような費用は、毎月発生するものではなく、一回当たりの金額が少額であるため、旅費交通費ではなく雑費として計上することも可能です。
同様の理由で、賃借人に書類を送付するためにかかった郵送代や、不動産仲介業者との打ち合わせに使用した飲食代、管理組合に配布する資料の作成に用いるコピー用紙代や、筆記用具代などは雑費として計上するケースもあります。
ただし、1台(または1組)あたりの取得価額が10万円以上 のパソコンなどは、原則として数年間に分けて減価償却費として計上する必要があります(※)。(ただし、青色申告をしている個人事業主であれば、30万円未満の資産を一括でその年の必要経費にできる特例もあります)
※ 参考:国税庁.「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」. ,(参照 2026-04-20).
雑費として計上する際の注意点
前章で雑費として計上できる経費の一例をご紹介しましたが「細かく仕分けするよりも雑費として計上した方が楽だから」といって、何でもかんでも雑費にするのはNGです。
全体の経費に占める雑費の割合が大きくなると、以下のようなリスクが懸念されます。
● 経営状況を正確に把握しにくくなる
● 税務調査が入るリスクが高くなる
● 融資・支援で不利になる可能性がある
以下で、それぞれのリスクについて解説します。
経営状況を正確に把握しにくくなる
多くの経費を雑費として計上すると、後から帳簿を見返した際に、何にどれだけの経費がかかったのかを正確に把握できません。
不動産投資に限らず、事業経営では経費削減が重要な課題ですが、経費の明細が分かっていなければどこをどう削減すべきか判断しにくく、コストカットに失敗する恐れがあります。
税務調査が入るリスクが高くなる
雑費の額が多いと、税務署から「多額の使途不明金がある」と疑われ、税務調査の対象になる場合があります。
特に、後から用途を証明できない場合は、経費として認めてもらえない可能性が高くなるため要注意です。
融資・支援で不利になる可能性がある
融資や支援の審査では、決算書や確定申告書などの提出を求められます。しかし、雑費が多いと帳簿自体の信憑性が低いと判断され、審査に落ちるリスクが高くなることがあるので注意しましょう。
決算書や確定申告書は、直近3期分 の提出を求められるのが一般的です。そのため、今後融資や支援を利用する可能性がある場合は、日頃から適切な仕訳を意識することが大切です。
不動産投資の経費・雑費として計上できないものの例
経費として計上できるのは、あくまで不動産投資に必要なものに限定されるため、直接関係のないものや、必要性が低いと判断されたものは経費や雑費として計上できません。
経費・雑費になるか否かの線引きは難しい部分もありますが、以下では、特に注意が必要なケースをご紹介します。
スーツ代やビジネスバッグ代など
不動産仲介業者やマンション管理会社との打ち合わせの際に身に付けていくスーツやビジネスバッグの購入費は、基本的に経費・雑費として計上できません。
「打ち合わせは不動産経営に必要なものだから経費になるのでは?」と思うかもしれませんが、スーツやビジネスバッグなどの装飾品はファッションアイテムとしての意味合いが強く、業務以外で使っていないことを証明するのは困難です。
特に、不動産投資の場合、業者との打ち合わせは頻繁に行うものではないため、経費として認めてもらうのは難しいでしょう。
所得税・住民税・法人税
不動産所得にかかる所得税や住民税、法人税は、租税公課として計上できません。これらの税金は個人の所得や法人の利益に対して課せられるものであり、事業そのものに必要な税金とは見なされないため、誤って計上しないよう注意しましょう。
反則金・罰金
法や条例に違反した際に科せられる反則金や罰金は、業務中だったか否かにかかわらず経費として計上できません。そもそも反則金や罰金は、違反・違法行為に対して科せられるペナルティであり、業務とは本来何の関わりもないためです。
ただし、交通事故で自走できなくなった車を移動するためにレッカー代が必要だった場合は、反則金や罰金の有無とは関係なく、雑費として計上できます。
資格取得費用
不動産経営を行うに当たって、マンション管理士や賃貸不動産経営管理士といった資格取得を目指す方も多いでしょう。しかし、これら資格の受験代や登録費、試験会場までの交通費などは、一般的に個人のスキルアップと見なされ、経費として計上できないことが多いため注意しましょう。
不動産経営に特定の資格は必要なく、無資格であっても投資を行うことが可能であるためです。上記の資格は不動産経営に役立ちますが、あくまで個人的なスキルアップと見なされるため、経費として扱われない点に注意しましょう。
家族への給与・賃金
不動産投資における家族への給与・賃金は、経費になるケースとならないケースがあります。法人の場合は、家族に支払う給与・賃金を経費として計上できます。
ただし、従事している業務に対して支払っている給与が高過ぎると見なされる場合や、勤務実態が曖昧な場合は、経費として認めてもらえない可能性があるため注意しましょう。
個人事業主の場合、生計を一にしている家族への給与・賃金は家計内の資金移動と見なされるため、原則として経費計上できません。ただし、不動産投資を一定の規模(事業的規模)で行っており、かつ要件を満たしている場合は、支払った給与や控除を必要経費として計上することが可能です(※)。
※ 参考:国税庁.「No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除」(参照 2026-04-20).
家事関連費のうち、家事按分として認められないもの
家事関連費とは、事業関連費と家事費の性質を併用している費用のことです。家事関連費のうち、事業関連費は経費として計上できますが、家事費は私的な費用であるため経費にはなりません。
そのため、家事関連費は事業に使用した分のみを算出し、経費計上する必要があります。これを家事按分といいます。例えば、個人事業主が自宅で不動産投資に関わる事務作業を行っている場合、自宅の地代家賃や光熱費などを家事按分すれば、経費として計上することが可能です。
ただし、家事按分するにはその支出が事業に必要であることや、客観的な根拠に基づいた按分であることを証明する必要があります。
不動産投資の雑費・経費でよくある質問
不動産投資における雑費や経費でよくある質問を3つご紹介します。
Q1. 領収書がなければ経費計上できませんか?
A.支払った事実を証明できれば計上できます。雑費として支払うものは少額であるケースが多いため「うっかり領収書を捨ててしまった」「あるいは最初から受け取っていない」ということもあるでしょう。
そのようなときは、領収書に代わるデータや書類を用意することで、経費計上できる可能性があります。例えば、交通費なら公共交通機関のICカードの利用履歴のデータ取得をする、物品の購入や水道光熱費の支払いならクレジットカードや電子マネーの利用明細を活用するなどです。
ただし、これらはあくまでやむを得ない場合の対応であり、原則として領収書を忘れずに受け取り、保管することが重要です。
Q2. 不動産投資で雑費として計上できる金額に目安や上限はありますか?
A.法的な上限は設けられていませんが、一般的には「年間で数万円から十数万円程度」、あるいは「経費全体の数%以下」に抑えるのが無難とされています。
前述したように、内容のわからない雑費があまりに多過ぎると、税務署から使途不明金として目をつけられるなど、さまざまなリスクを負うことになります。たとえ明確な上限がなくても、何でも雑費にするのではなく、適切な科目に分けてできるだけ少額にとどめることが重要です。
Q3. 雑費が多くなった場合はどうすればよいですか?
A.仕訳の見直しや高額な経費の計上に注意してみましょう。雑費が目安よりも大きくなった場合は、経費の用途を再度確認し、他の科目に仕訳できるものがないかどうか見直してみましょう。
「どうしても他の科目に該当しない」という経費のみを雑費として計上すれば、雑費の額が大きく膨らむリスクは少なくなります。特に、高額な経費については雑費の総計が膨らむ要因になるため、できるだけ他の科目で計上しましょう。
どの勘定科目に該当するか分からない場合は、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
【まとめ】不動産投資で雑費計上する場合は金額や用途に注意
不動産投資では、交通費や接待交際費、新聞図書費、消耗品費などを雑費として計上できます。
ただし、雑費や経費として計上できるものは不動産投資に関連していると証明できるものに限ります。不動産投資に直接関係がない出費はもちろん、プライベートとの見分けが付きにくいものは経費として認められない可能性が高いため、注意しましょう。
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