不動産相続登記の義務化に注意! 登記手続きしなかった場合のリスクや登記の流れ、必要書類を解説
相続・不動産投資
2026.08.19
更新日 2026.08.19
両親などから土地や建物を相続した場合は、所有者を被相続人から相続人に移転する不動産相続登記手続きを行う必要があります。
かつては不動産の相続登記を行うかどうかは任意でしたが、現在は法改正によって義務化されています。正当な理由なしに登記を行わなかった場合はペナルティが科せられる恐れがあるため、不動産を相続したら速やかに相続登記手続きを行いましょう。
本記事では、不動産の相続登記に関する基礎知識や相続登記を行わなかった場合のリスク、手続きの方法と必要書類、相続した不動産の活用方法について解説します。
目次
不動産相続登記とは? 基礎知識と法改正による義務化を解説
不動産相続登記とは、相続した不動産の名義を変更するために行う手続きのことです。登記を行うと、いつ・誰が・どのような原因でその不動産を取得したか、といった情報が登記簿として記録される仕組みになっています。
かつて不動産相続登記は相続人の任意とされていましたが、登記簿を見ても誰が所有者なのか分からない所有者不明の土地が全国で増加しました。その結果、管理されない土地が荒れ放題になって周辺環境に悪影響を及ぼしたり、土地を自由に売買できず公共事業や民間事業に支障を来したりと、さまざまな問題が浮上しました。
そこで国では、令和6年4月1日 に改正民法および不動産登記法を施行し、不動産の相続登記を義務化したのです。現在では、相続人が不動産の取得(相続)を知った日から3年以内 に相続登記をすることが法律で義務づけられています(※)。
なお、不動産相続登記の義務化は施行日(令和6年4月1日)よりも前に相続した不動産も対象となっており、原則として 令和9年3月31日 までに相続登記する必要があります。「以前不動産を相続したけれど、面倒で登記手続きしなかった」という方は、期限内に手続きを済ませなければペナルティの対象となるため、早急に手続きを済ませましょう(※)。
※ 参考:政府広報オンライン.「不動産の相続登記義務化!過去の相続分は?所有不動産を一覧的にリスト化する新制度も開始!」.(2026-02-02).
期限までに不動産相続登記手続きを行わなかったらどうなる? 注意すべきリスクやペナルティ
定められた期限までに不動産相続登記手続きを行わなかった場合、以下のようなリスクやペナルティが発生する可能性があります。
過料のリスク
正当な理由なしに相続登記を行わなかった場合、10万円以下 の過料が科される恐れがあります(※)。ここでいう正当な理由とは、以下のような事例が該当します。
● 相続人が極めて多いために戸籍関係書類などの収集にかなりの時間を要する場合
● 遺言の有効性などについて争われている場合
● 相続人が重病で手続きが困難な場合
上記はあくまで一例であり、正当な理由に当たるか否かは、個別事情を鑑みた上で法務局の登記官が判断します。すぐに相続登記ができない場合は、あらかじめ相続人申告登記制度を活用すれば、相続登記の義務を果たすことが可能です。
相続人申告登記制度とは、相続登記の義務化とともに創設された新制度です。通常の相続登記とは異なり、被相続人(亡くなった方)の生まれてから亡くなるまでの戸籍をすべて集める必要がなく、「自分が相続人であること」を示す一部の戸籍等と住所証明書を提出するだけで、スピーディーに申請義務を履行できるのが大きなメリットです。
申請義務を履行すれば前述した過料の適用対象にはならないため、ペナルティ対策として有効です。ただし、相続人申告登記制度はあくまで相続登記の申請義務を履行するためのものであり、不動産についての権利関係を公示するものではありません。
そのため、同制度を活用しても、相続した不動産を売却したり、抵当権を設定したりすることはできないため、問題が解決したら速やかに相続登記の手続きを行いましょう。
※ 参考:政府広報オンライン.「不動産の相続登記義務化!過去の相続分は?所有不動産を一覧的にリスト化する新制度も開始!」.,(2026-02-02).
不動産の権利関係が複雑になる
不動産相続手続きを行わなければ、その不動産の所有者が誰なのかを正確に把握できなくなります。法定相続人は被相続人の配偶者以外に、子や父母、祖父母、兄弟姉妹など広範囲にわたるため、登記が長年にわたって放置されるほど権利関係もどんどん煩雑になっていきます。
その結果、権利関係者をさかのぼって把握するための調査に手間や時間がかかったり、遺産分割協議でもめたりするリスクが高まるでしょう。
不動産を売却できない
不動産を売却する権利は、原則としてその不動産の所有者にあるため、相続登記が行われていない場合は、不動産を自由に売却できません。
売却ができないまま不要な不動産を持ち続けると、固定資産税や都市計画税が毎年発生する上、建物や土地の管理も行わなければならないため、経済的な負担がかさむ原因となります。
不動産担保付き融資を利用できない
売却時と同じく、不動産を担保に入れられるのは所有者のみであるため、相続登記を行っていない場合は、該当の不動産を担保に入れた融資は利用できません。
不動産担保付き融資は、一般的な融資に比べて高額な資金を比較的低金利で調達できるというメリットがあります。そのため、相続した不動産を活用して子どもの教育資金や相続した不動産の大規模修繕費用を確保したい方にとっては大きなデメリットになるでしょう。
不動産相続登記の手続き方法と具体的な手順
ここからは、不動産相続登記手続きの方法と具体的な流れを説明します。
相続する不動産の情報を確認する
まずは法務局で登記事項証明書を取得し、相続する不動産の情報を確認
します。登記事項証明書は不動産ごとに発行されるため、建物ごと相続した場合は土地と建物両方の証明書を申請しましょう。
被相続人が一人で所有していた場合は、その不動産の所有権が丸ごと相続財産になりますが、もし該当の不動産が共有名義になっていた場合、相続できるのは被相続人の持ち分のみとなるため注意が必要です。
なお、相続に当たって持ち分が自動的に他の共有者へ移転したり、優先的に相続されたりすることはありません。例えば、父と長男が持分1/2ずつで不動産を共有しており、父親が亡くなったとします。この場合、父が所有していた持ち分1/2のみが相続財産となり、遺言がない場合の法定相続では、配偶者が父親の持分の半分(全体の1/4)を相続し、残りの半分(全体の1/4)を長男を含む子ども全員で均等に分け合います。
遺言または遺産分割協議で相続財産の分配方法を決める
相続する不動産の情報を確認したら、相続財産の分配方法を決めます。遺言がある場合は原則としてその内容が優先されるため、相続人全員が納得していれば遺産分割協議を行う必要はありません。
もし遺言の内容に不服がある場合は、無効の申し立てを行ったり、法定相続人に最低限保証された遺留分を請求したりできます。遺言がない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分配方法を決めることになります。
協議で決めた内容は遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・実印での押印をした上で、各自が保管するのが一般的です。遺産分割協議書は、不動産相続登記の手続きで必要になるため、大切に保管しておきましょう。
不動産相続登記に必要な書類を準備する
不動産を相続する人は、不動産相続登記手続きのための書類を準備する必要があります。必要書類は分配方法などによって異なる場合があるため、ご自身の状況ではどのような書類を用意しなければならないのか、事前に確かめておきましょう。
必要書類については、次章で詳しく説明します。
法務局で申請手続きを行う
相続不動産を管轄する法務局にて不動産相続登記の申請手続きを行います。なお、相続登記手続きを行うには書類の提出だけではなく、登録免許税の納付が必要です。
登録免許税の納付方法には、主に「収入印紙による納付」と「金融機関等での現金納付」があります。
窓口や郵送で申請する場合は、登録免許税額分の収入印紙を購入し、台紙(納付書など)に貼り付けて必要書類とともに提出するのが一般的です。収入印紙は、法務局内にある印紙売場や郵便局などで購入できます。 また、事前に日本銀行(一般の銀行などの金融機関)や税務署の窓口で現金納付し、その際に受け取った領収証書を台紙に貼り付けて提出することも可能です。なお、オンライン申請をする場合は、インターネットバンキングやペイジー(Pay-easy)を利用して電子納付することもできます。
なお、登録免許税額は不動産の「固定資産税評価額(1,000円未満切り捨て)」課税標準に0.4% を乗じて計算します。例えば、固定資産税評価額が2,000万円の土地・建物を相続した場合、登録免許税は2,000万円 × 0.4% = 8万円です。
固定資産税評価額(価格)は、毎年市区町村から送付される固定資産税の課税明細書に記載されているため、あらかじめ納税額を計算した上で、必要となるお金を準備しておきましょう。
登記識別情報通知書と登記完了証を受け取る
相続登記の申請手続きが完了し、所定の審査および事務手続きを行った後は、登記識別情報通知書と登記完了証を受け取ります。
これらの書類は再度窓口に出向いて交付してもらう方法の他に、郵送してもらうことも可能です。郵送を希望する場合は、宛名を記載した返信用封筒と郵送にかかる分の郵便切手を添えて提出しましょう。
不動産相続登記に必要な書類
不動産相続登記を行う際に必要な書類には、以下のようなものがあります。
● 登記申請書
● 戸籍の証明書
● 遺産分割協議書および印鑑証明書(該当の場合)
● 遺言書(該当の場合)
● 住民票の写し
● 固定資産税納税通知書の課税明細書または固定資産評価証明書
ここからはそれぞれの書類について説明します。
登記申請書
登記申請書は、相続登記を申請する際に作成する書面のことです。登記申請書は法務局の窓口でもらえる他、法務局のWebサイトからもダウンロードできます。
現地での手続きを簡略化したい場合は、あらかじめ自宅で申請書を作成しておくとよいでしょう。申請書には主に以下のような情報を記入します。
● 登記の目的
● 登記の原因
● 相続人の氏名・住所・生年月日・連絡先など
● 相続不動産の課税価格
● 登録免許税額
● 相続不動産の所在地や面積など
戸籍の証明書
被相続人の出生から死亡までの経緯が分かる戸籍の証明書として、被相続人の戸籍謄本を準備します。被相続人の配偶者や直系尊属(父母や祖父母など)、直系卑属(子や孫など)であれば、本籍地にかかわらず最寄りの市区町村で入手することが可能です。
また遺産分割協議で財産の分配方法を決めた場合は、協議の当事者が相続人の地位を有していることを証明するために、相続人全員の戸籍謄本も用意する必要があります。
遺産分割協議書および印鑑証明書(該当の場合)
遺産分割協議を行った場合は、遺産分割協議書と、協議書に押印された印鑑の証明書を用意しましょう。協議書には相続人全員分の印鑑が押印されているため、印鑑証明書も各人のものを一通ずつ用意する必要があります。
印鑑証明書は、その印鑑を登録した市町村役場やサービスセンターなどの窓口で交付してもらえる他、マイナンバーカードを利用すればコンビニのマルチコピー機を使って取得することも可能です。
窓口交付の場合は、印鑑登録証と申請に行く人の本人確認書類などを持参すれば誰でも申請できます。必要書類などは自治体によって異なるため注意しましょう。またコンビニ交付の場合は、マイナンバーカードを利用する性質上、本人しか申請できません。
相続人全員分の印鑑証明書を取得するにはやや時間がかかる恐れがあるため、早めに書類の準備を始めることをおすすめします。
遺言書(該当の場合)
遺言書で財産の分配を決めた場合は、遺言書を準備します。遺言書には以下3つの種類があり、それぞれ保管場所が異なるため注意が必要です。
【自筆証書遺言】 保管場所:自宅などまたは法務局
【公正証書遺言】 保管場所:公証役場
【秘密証書遺言】 保管場所:自宅など正証書遺言
自筆証書遺言が法務局で保管されている場合は、遺言書情報証明書が必要です。遺言書情報証明書は全国の遺言書保管所で取得できますが、遺言者(被相続人)の死亡後でなければ手続きできないため、相続開始後に請求する必要があります。
なお、自宅や貸金庫などで保管されていた自筆証書遺言(法務局で保管されていたものを除く)または秘密証書遺言は、家庭裁判所での「検認」が必要です。検認は申し立てから検認の実施までに約1カ月 の期間を要するため、優先的に手続きを進めておいた方がよいでしょう。
住民票の写し
相続不動産の新しい所有者の住民票の写しを準備します。相続不動産を複数人で相続して共有名義にする場合は、全員分の住民票の写しが必要です。住民票の写しは市区町村役場の窓口の他、コンビニ交付にも対応しています。
なお、住民票の写しは住民基本台帳ネットワークシステムの活用により、住民登録している市区町村役場以外でも請求できます。
固定資産税納税通知書の課税明細書または固定資産評価証明書
固定資産税納税通知書の課税明細書または固定資産評価証明書は、申請時に納める登録免許税の計算や証明に必要となる書類です。
課税明細書は、毎年4月ごろ に市区町村から送付される固定資産税納税通知書に同封されています。もし課税明細書が見つからない場合は、市区町村役場の窓口で固定資産評価証明書の交付を申請しましょう。
必要に応じてそろえる書類
前述した書類の他にも、必要に応じて以下のような書類を提出しなければならない場合があります。
■委任状・・・代理人に登記申請を委任する場合に必要
■被相続人の住民票の除票または戸籍の附票の写し・・・被相続人の最後の住所や本籍が登記記録上の住所と異なる場合に必要
■登記済証・・・被相続人の最後の住所が登記記録上の住所と異なる場合で、かつ上記の除票や附票でもつながらない場合に必要
■相続関係説明図・・・戸籍謄本の原本の還付を希望する場合に必要
上記以外にも、ケースによって別途書類の提出を求められる可能性があります。必要書類に関して分からない場合は、法務局などに問い合わせて相談してみましょう。
相続登記した不動産の利用法
相続登記を済ませた不動産を利用する方法には、以下のようなものがあります。
● 自分で住む
● 売却する
● 駐車場などにする
● 賃貸に出す
元々その家に住んでいた場合は、相続してそのまま住み続ける方法があります。すでに住居がある場合は、不動産仲介業者に依頼して売却を検討するのもよいでしょう。
建物が傷んでいる場合は、更地にした上で、月極駐車場やコインパーキングとして利用するのも一つの方法です。もし相続した建物がワンルームマンションやアパート一棟だった場合は、賃貸に出せば不労所得を得る手段になります。
ただし、不動産経営には相応の知識やノウハウが必須です。「賃貸不動産を相続したけれど、どう運営していけばよいか分からない」という場合は、信頼できる不動産管理会社(マンション管理会社)に業務を委託することを検討しましょう。
【まとめ】不動産を相続したら忘れずに相続登記を済ませよう
不動産相続登記は令和6年4月1日から義務化されています。この日以降に相続した不動産はもちろん、それ以前に相続した不動産についても、期日までに相続登記を済ませなければ過料などのペナルティを受ける対象になります。
そのため、不動産を相続したら、なるべく早めに相続登記手続きを済ませ、過料や権利関係の複雑化、売却不可などのリスク解消に努めましょう。
相続した不動産の利活用パターンは複数ありますが、ワンルームマンションやアパートを相続した場合は賃貸に出して家賃収入を得る手段もあります。その場合は信頼できる不動産管理会社に入居募集や管理業務を委託し、空室リスクや業務負担を軽減しましょう。
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※本コラムに記載されている相続登記の制度概要、各種手続き、登録免許税の計算方法などの法的・税務的な情報は、記事公開時点の一般的な法令等に基づく情報提供を目的としたものです。実際の不動産相続における遺産分割協議の法的有効性、具体的な税額計算、および登記手続きの詳細につきましては、必ず所轄の法務局・税務署、または弁護士、司法書士、税理士などの専門家にご相談ください。