相続不動産売却で期待できるメリットは? 気をつけるべきデメリットと売却の流れ、節税方法を解説
相続・不動産投資
2026.08.05
更新日 2026.08.06
両親などから相続した不動産を売却した場合、資産を現金化できるのはもちろん、相続でもめにくい、将来の管理コストをカットできるなど多くのメリットがあります。
一方で、不動産を利活用した場合に得られる収入がなくなる、売却に手間とコストがかかるといったデメリットもあります。一度売却した不動産は簡単には取り戻せないため、相続不動産をどう取り扱うかは慎重に検討しましょう。
本記事では、相続不動産を売却するメリットとデメリット、売却の手順、売却によって発生する税金の節税方法をまとめました。
目次
相続不動産を売却するメリット
相続不動産を売却すると、以下のようなメリットを期待できます。
● 遺産の分配がスムーズになる
● まとまった現金を取得できる
● 将来の維持管理リスクを回避できる
● 資産の組み換えが可能になる
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
遺産の分配がスムーズになる
相続不動産を売却すると資産を現金化できるため、遺産の分配がスムーズに進みやすくなります。相続財産の中に不動産があった場合、遺産の分配方法は主に以下3つのパターンになります。
● 不動産を売りに出し、売却金を法定相続分にならって分配する(換価分割)
● 複数の相続人の共有資産にする(共有分割)
● 不動産の相続人が、他の相続人に対して代償金を支払う(代償分割)
このうち、トラブルの種になりやすいのが共有分割です。相続不動産を共有名義にすると、自分の一存で利用方法を決めるのが難しくなります。一方で、持ち分の固定資産税や都市計画税は支払わなくてはならないため、負の遺産になりやすい傾向にあります。
そのため、思い入れのある土地・建物を手放したくない場合は代償分割を選択するのが一般的ですが、相続不動産の価値によっては超過分(代償金)の支払いが大きな負担になるところがネックです。
その点、換価分割は現金という形で細かく分配できるため、相続人全員が納得しやすいというメリットがあります。
まとまった現金を取得できる
相続不動産に価値がある場合、売却によってまとまった現金を得られるのもメリットの一つです。
不動産が高値で売れれば、住宅ローンの返済や子どもの教育資金、老後の資産づくりなどさまざまなシーンで活用できるため、将来設計の役に立つでしょう。
将来の維持管理リスクを回避できる
相続不動産を売却すれば、土地・建物の維持管理にかかる手間やコストを回避できます。不動産を所有していると、毎年固定資産税や都市計画税といった税金が課せられる上、建物のメンテナンスや土地の整備などを行わなければなりません。
なお、相続した土地が居住用だった場合は、固定資産税や都市計画税の軽減措置を受けられます。しかし、建物の状態が著しく悪いと判断されると特定空家などに認定され、適用対象外となるので注意しましょう。この場合、税の負担がさらに重くなるため、経済的なデメリットが大きくなりやすいです。
相続不動産を売却すれば、これらの税金を納めたり、土地・建物をメンテナンスしたりする必要がなくなります。そのため、不動産の利用方法が決まっていない方や、遠方で維持管理が難しい方にとっては大きなメリットとなるでしょう。
資産の組み換えが可能になる
不動産における資産の組み換えとは、所有している不動産を売却して得たお金を元手に、新たな土地・建物を取得することです。
例えば、相続した不動産よりも価値の高い不動産への組み替えを行い、賃貸経営すれば、不労所得を得る有効な手段になり得ます。
相続不動産を売却する際に懸念されるデメリット
相続不動産を売却すると多くのメリットがある一方、以下のようなデメリットに注意する必要があります。
● 家賃収入を失う
● 売却費用がかかる
● 思い入れのある不動産を失う
● 売却に時間を要する恐れがある
それぞれのデメリットについて詳しく解説します。
家賃収入を失う
相続不動産が賃貸アパート・マンションだった場合、売却すると家賃収入を失うことになります。特に、立地や建物の状態が良い物件は安定した家賃収入を得やすいです。将来的には売却金よりも多くの利益を得られる可能性があることから、結果的に損をする可能性があります。
また物件に入居者がいる状態で売却を検討する場合は、賃借人に対して立ち退き交渉をする必要があります。この場合、オーナー都合になるため立ち退き料を負担しなければなりません。また「物件を売却するため」という理由は正当事由として認められにくく、立ち退き料を提示しても応じてもらえるとは限らない点に注意しましょう。
売却費用がかかる
相続不動産を売却する場合、以下のような費用が発生します。
● 譲渡所得税(※売却益が出た場合のみ)
● 登録免許税
● 印紙税
● 不動産仲介手数料
上記の他にも、土地を売却する場合は隣地との境界を明確にするための確定測量費がかかったり、更地にして売却する際に建物の解体費が必要になったりすることがあります。
前章で、相続不動産の売却はまとまった現金を取得できるのがメリットと説明しましたが「費用を差し引いたら思ったほど手元に残らなかった」というケースも考えられるため注意が必要です。
思い入れのある不動産を失う
相続した物件が実家だった場合、思い出の詰まった不動産を売却することに寂しさや抵抗を覚えることもあるでしょう。
冒頭でも説明したように、一度手放した不動産を取り戻すのは難しいため、思い入れのある不動産を手放して後悔しないかどうか、慎重に考えることが大切です。
売却に時間を要する恐れがある
相続不動産を売却しようとしても、すぐに売れるとは限りません。
立地や建物の状態が良ければ短期間で売れる可能性もあります。しかし条件によっては、なかなか買い手が付かず、年単位の時間が経過することもあり得るでしょう。
前述したように不動産は所有しているだけで税金がかかります。
また相続した不動産が空き家の場合、売却するまでの管理は自分で行う必要があります。
後者に関しては、空き家管理サービスなどを利用する方法もありますが、月額料金がかかるため、経済的な負担は大きくなりがちです。だからといって空き家を売れるまで放置していると、建物の傷みや土地の荒れ具合が進み、不動産の価値そのものが下落する恐れがあります。
このように、相続不動産の売却に時間を要するケースでは、さまざまなリスクが想定されることを念頭に置いておきましょう。特に、相続不動産の売却は先に不動産相続登記を済ませなければなりません。そのため、一般的な不動産売却よりも時間がかかりやすい点に注意が必要です。
相続不動産を売却するときの具体的な手順
相続不動産を売却するには、いくつかの手順を踏んで取引を進めていく必要があります。手続きが滞るとスムーズに売却しにくくなるため、あらかじめ相続不動産の売却手順を覚えておきましょう。
ここでは、相続不動産を売却するときの具体的な手順を6つのステップに分けて説明します。
1. 相続登記を行う
相続登記とは、相続不動産の名義を被相続人から相続人に変更するために行う手続きです。不動産は原則として所有者でなければ売却できないため、まず相続登記を行って名義を変更する必要があります。
なお、不動産の相続登記は法改正に伴い、令和6年4月1日から義務化されています(※)。売却するか否かに関係なく、原則として「自分が相続人であることを知り、かつ不動産の取得を知った日」から3年以内に相続登記を済ませる必要があります(遺産分割協議で分け方が決まった場合は、その話し合いがまとまった日から3年以内)。期日を過ぎると10万円以下の過料の対象となるため、売却の可否を問わず、相続登記は早めに行っておきましょう。
相続登記は相続不動産を管轄する法務局で申請します。その際は登記申請書を作成する他、登記簿謄本や戸籍謄本、遺言書または遺産分割協議書といった書類が必要です。
必要書類は遺言書の有無など相続の形態によって異なる他、書類ごとに取得方法や取得場所がまちまちであるため、全てそろえるまでに時間がかかることもあります。スムーズに売却したいのなら、そろえるべき書類を確認し、早めに準備を開始しておきましょう。
※ 参考:政府広報オンライン.「不動産の相続登記義務化!過去の相続分は?所有不動産を一覧的にリスト化する新制度も開始!」(2026-02-02).
2. 不動産仲介業者に相談する
相続登記を終えたら、不動産仲介業者に相続不動産の売却について相談しましょう。仲介業者を入れずに個人間で売買すると、後のトラブルの原因となるため、プロの力を借りて売却を進めるのが一般的です。
不動産仲介業者に依頼すると、スタッフが現地で物件を調査し、立地や建物の状態、周辺環境などさまざまな要素を基準にしながら価格査定を行います。なお、ここで提示される不動産価格はあくまで概算であり、その価格で売れることを保証するものではありません。
そのため、複数の不動産仲介業者から相見積もりを取る場合は、査定額だけに振り回されず、営業担当者の対応や売却方法の提案内容、取扱物件数の多さ、地域密着性など、さまざまな要素を加味して業者を選ぶことが大切です。
3. 不動産仲介業者と媒介契約を締結する
依頼する不動産仲介業者が決まったら、正式に媒介契約を締結します。媒介契約には、1社のみと契約を締結する専属専任媒介と専任媒介、複数社に依頼できる一般媒介の3パターンがあり、それぞれ以下のような特徴があります。
【専属専任媒介】
■買い主との直接取引・・・・・・・不可
■業者から売り主への報告義務・・・あり(1週間に1回以上)
■レインズへの登録・・・・・・・・あり(契約後5日以内)※休業日を除く
■契約期間・・・・・・・・・・・・3ヶ月以内
【専任媒介】
■買い主との直接取引・・・・・・・可
■業者から売り主への報告義務・・・あり(2週間に1回以上)
■レインズへの登録・・・・・・・・あり(契約後7日以内)※休業日を除く
■契約期間・・・・・・・・・・・・3ヶ月以内
【一般媒介】
■買い主との直接取引・・・・・・・可
■業者から売り主への報告義務・・・なし
■レインズへの登録・・・・・・・・なし
■契約期間・・・・・・・・・・・・期限なし(実務上は3ヶ月が多い)
レインズとは、不動産仲介業者が物件情報を共有・確認できるシステムです。レインズに登録された物件はシステムを通じて多くの不動産仲介業者の目にとどまるため、買い主を早く見つけられる確率が高まります。
専属専任媒介と専任媒介は媒介契約締結後、一定期間内にレインズに登録する義務があります。しかし、一般媒介は任意であるため、もし登録されなかった場合は買い手が付くまで時間がかかる恐れがあるでしょう。
また専属専任媒介と専任媒介は、売り主に対して定期的に売却活動の報告を行うことが義務づけられています。そのため、きめ細かなサービスを受けたい場合は専属専任媒介あるいは専任媒介を利用するのがおすすめです。
さらに、専属専任媒介や専任媒介は契約期間が最長でも3カ月となっています。もし期間内に売れなかった場合は再度契約を締結し直すか、他の不動産仲介業者と契約する必要があるでしょう。
このように、契約ごとに特徴が異なるため、ご自身のニーズに適した契約方法を選ぶことが重要です。なお、不動産の売却依頼時には以下のような書類を用意する必要があります。あらかじめ書類を準備しておけば、手続きをよりスムーズに進められるはずです。
● 登記簿謄本(登記事項証明書)
● 物件購入時の売買契約書(※取得費を証明するため)
● 物件取得時の重要事項説明書
● 登記済権利書または登記識別情報
● 土地測量図・境界確認書
● 固定資産税納税通知書・固定資産税評価証明書
● 物件の図面
● 設備仕様書
● 建築設計図書
● マンションの管理規約
● 耐震診断報告書
どのような書類が必要になるかはケースによって異なる他、中には査定依頼の段階で必要になるものもあります。いつまでにどういった書類を準備しておくべきか、事前に仲介業者に問い合わせておくとよいでしょう。
4. 売却活動を開始する
不動産仲介業者と相談しながら販売活動を開始します。具体的には、相続不動産をどのくらいの価格で売りに出すか、どういった広告を打ち出すかなどを打ち合わせ、販売戦略を練っていきます。
なお、販売価格は査定内容や査定額を基に、業者と相談して決めるのが一般的です。査定額より高く売り出すこともできますが、相場よりも高値で販売すると買い手が付きにくくなる恐れがあります。物件の正当な価値と市場の相場を見極めた上で、適切な価格を設定するのがスピーディな売却を実現するポイントです。
販売戦略に基づいて広告を打ったら、購入希望者が現れた場合に備えて内覧の準備を行います。空き家の場合は掃除や整理整頓、換気などを行い、少しでも物件のイメージを良く見せることを心掛けましょう。
5. 売買契約を締結する
買い手が見つかったら、業者仲介の下、売買契約を締結します。売買契約を締結した時点で、不動産仲介業者に対して仲介手数料の50%を支払うのが一般的です。
売買価格から仲介手数料を計算し、あらかじめ手数料を準備しておきましょう。
6. 物件を引き渡す
買い主に対して物件の引き渡しを行います。
物件を引き渡すには相続不動産の所有権を移転する手続きが必要になりますが、一般的には司法書士が代行するため、必要に応じて書類への押印や委任状の作成などを行いましょう。
また、この段階で仲介手数料の残額を不動産仲介業者に支払います。
相続不動産を売却する際に実践したい節税方法
相続不動産を売却する際に発生する譲渡所得税を少しでも軽減したい場合は、以下の節税方法を実践してみましょう。
譲渡費用をしっかりと計上する
譲渡所得税は、不動産を売却して得た金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するため、譲渡費用をもれなく計上すれば節税になります。譲渡費用とは、不動産を売るためにかかった費用のことで、例えば以下のようなものが該当します。
● 不動産仲介手数料
● 土地の確定測量費
● 売買契約書の印紙代
● 建物の解体費
● 貸借人に支払う立ち退き料
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例を活用する
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例とは、相続で取得した不動産を一定期間内に売却した場合、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できる特例のことです(※)。
前述した譲渡費用と同じく、取得費も譲渡所得税を計算する際に売却益から控除される項目であるため、特例を利用すれば大きな節税効果を見込めます。なお、この特例を適用するには、相続税の申告期限の翌日から3年以内(つまり、相続が始まってから3年10カ月以内)に不動産を売却する必要があります(※)。
※ 参考:国税庁.「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」.,(参照 2026-04-22).
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例を利用する
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例とは、相続によって取得した被相続人の居住用の家屋・土地を一定期間内に売却し、かつ一定の要件を満たした場合に譲渡所得の金額から最高3,000万円までを控除できる制度です(※)。
この特例を利用すれば、取得費や譲渡費用を差し引いて求めた譲渡所得から、さらに多額の控除が適用されるため、譲渡所得税の大幅な節約を期待できます。ただし、この特例の対象となる家屋には以下3つの要件を満たす必要があります(※)。
● 昭和56年5月31日以前に建築された家屋である
● 区分所有建物登記がされていない建物である
● 相続開始の直前において被相続人以外に居住していた人がいない家屋である
● 売却代金が1億円以下である
※ 参考:国税庁.「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」. ,(参照 2026-04-22).
※なお、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」これら2つの特例は同一の物件に対して併用することはできません。
マイホームを売ったときの特例を利用する
マイホームを売ったときの特例とは、マイホームを売却する際に譲渡所得から最高3,000万円までの控除が適用される特例です(※)。
ここでいうマイホームには「現在自分が住んでいる家屋」はもちろん、一定の条件を満たせば「以前住んでいた家屋やその敷地」、「借地権」も含まれます。また家屋を取り壊して更地にした場合も上記に該当し、かつ取り壊しから1年以内に譲渡契約が締結されたケースなども対象です。
ただし、取り壊しの後、短期間でも駐車場など居住の用以外に利用していた場合は適用対象外となるため注意が必要です。
相続した家屋に住んでいる、あるいは少し前まで住んでいて、相続をきっかけに引っ越しを検討している場合はこの特例を適用すれば節税になります。
※ 参考:国税庁.「No.3302 マイホームを売ったときの特例」(参照 2026-04-22)
相続不動産売却はメリット・デメリットの両方を確認した上で検討しよう
相続不動産の売却には、遺産分割がスムーズにいきやすい、まとまったお金が手に入る、将来の維持管理コストを回避できるといったメリットがあります。一方で、売買に手間やコストがかかったり、思い入れのある不動産を失ったりする点はデメリットです。
特に、賃貸アパートや賃貸マンションを相続した場合、家賃収入を失うことになります。物件の運用次第では、一時的な売却金よりも多くの利益を得られる可能性があるため、収益性のある物件を相続した場合はより慎重な検討が必要です。
「家賃収入を得たいけれど、維持管理のノウハウがなくて不安」という場合は、信頼できる不動産管理会社(マンション管理会社)に物件の管理を委託してみてはいかがでしょうか。
株式会社中央ビル管理は、アパート・マンション管理会社として、管理戸数2万5,000超、賃貸仲介契約数4,570件以上の実績があります。埼玉・千葉・東京エリアに28店舗を構えており、地域ネットワークと管理・仲介の一体化を生かしてスピーディな空室解消を実現いたします。
「相続した賃貸物件を運用したいけれど、空室リスクが心配」「遠方にいて管理業務がままならない」といったお悩みがある方は、ぜひ株式会社中央ビル管理のサービス利用をご検討ください。
※本コラム内でご紹介している税制の特例や各種節税方法に関する情報は、記事公開時点の一般的な法令等に基づく情報提供を目的としたものです。実際の不動産売却における特例の適用要件の判定、具体的な譲渡所得税の計算、および確定申告における最終的な税務判断につきましては、必ず所轄の税務署または顧問税理士などの専門家にご相談ください。