家賃の決め方に固定資産税は関係する? 適正な家賃を決める方法を詳しく解説
賃貸経営
2026.08.05
更新日 2026.08.06
家賃の決め方によって、賃貸経営による収益には大きな差が生まれます。家賃を決めるときは、同じエリアにある競合物件の家賃や所有物件のグレードに加え、毎年発生する固定資産税も考慮しましょう。
本記事では、家賃を決める際に重要となる固定資産税の概要や計算方法、固定資産税を基にした家賃の決め方などを紹介します。適正な家賃の決め方に悩んでいる場合は、ぜひ参考にしてください。
目次
家賃の決め方に大きな影響を与える固定資産税
所有するアパートやマンションなどの家賃を決めるときは、同じエリアの家賃相場や所有物件のグレードといった多くの要素を考慮する必要があります。
固定資産税も家賃を決定する際に考慮すべき要素の一つです。固定資産税は土地や建物といった固定資産にかかる税金であり、アパートやマンションの評価額、標準税率などを基に計算されます。
固定資産税は、賃貸経営において毎年発生する固定費の一つです。家賃収入に対して固定資産税の割合が大きいと収益は圧迫され、経営が悪化する可能性があります。一方で、固定資産税を考慮して適正な家賃を検討することは、収益悪化を防ぐための一つの手段となります。
固定資産税の納税義務者は物件の所有者
賃貸物件における固定資産税の納税義務者は、アパートやマンションの入居者ではありません。固定資産税を納める必要があるのは、あくまでも物件の所有者です。具体的には、毎年1月1日時点で、登記簿や土地補充課税台帳、家屋補充課税台帳などに所有者として登録されている人が納税義務者となります。
納税先は、固定資産が所在する市町村です。ただし、東京都23区内の場合は東京都へ納税します。
固定資産税の納税額は納税通知書で確認できる
固定資産税の納税額は、納税者に対して送付される納税通知書で確認できます。納税通知書には、納税額の他、課税標準額や税率、納期などが記載されているためチェックしておきましょう。
納期は市町村の条例により定められ、原則として年に4回の納期に分けられます。ただし、納税者が希望する場合は一括で納税することも可能です。
家賃を決める際に重要な固定資産税の計算方法
固定資産税は、次の計算式によって求められます(※)。なお、市街化区域内に不動産がある場合は、固定資産税とあわせて「都市計画税」も課税されるのが一般的です。ここでは、基本となる固定資産税の計算方法を解説します。
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率)
以下で、固定資産税の計算方法について詳しく見ていきましょう。
※参考:総務省.「固定資産税」. ,(参照 2026-04-13).
1. 固定資産の評価
上記の計算式における課税標準額は、税金を算出するときの基礎となる金額を意味し、固定資産の評価額を基に決定されます。土地や家屋といった固定資産の評価額を決定する方法は、次の通りです。
● 土地:宅地や農地といった用途ごとの売買実例価格などを基礎として評価額を計算する
● 家屋:再建築価格に経年減点補正率などを乗じて評価額を計算する
土地の中でも「宅地」の場合は、地価公示価格などの7割を目安として評価額が決定されます。
また家屋の評価額を決定する際の再建築価格とは、評価時点において、対象となる家屋と同一のものを同じ場所に新築すると仮定した場合に必要な建築費のことです。家屋の評価額は、この再建築価格に、建築後の年数経過に応じて決まる減価の割合「経年減点補正率」などを乗じて計算されます。
このように決定された固定資産の評価額は、常に同じではなく、3年に1度見直しが実施されます。
2. 課税標準額の決定
固定資産の評価額を基に、課税標準額を決定します。基本的に、課税標準額は固定資産の評価額と同じです。ただし、一定の条件を満たしている場合、課税標準額を減少させる特例措置を受けられるケースもあります。
3. 固定資産税の計算
下記の計算式で、固定資産税を計算します。
固定資産税 = 課税標準額 × 1.4%(標準税率)
固定資産税は、課税標準額に1.4%という税率をかけて求めるのが基本です。ただし、市町村によっては条例で異なる税率を定めているケースもあるため、事前に確認しておきましょう。
また一定の条件を満たすと、新築住宅特例などの措置を受けられます。特例については次の項目で詳しく見ていきましょう。
固定資産税に関する代表的な特例措置
納税者の負担を軽減するため、固定資産税については次のような特例措置が設けられています。
● 住宅用地特例
● 新築住宅特例
それぞれの特例についてチェックしておきましょう。
1. 住宅用地特例
住宅用地特例は、住宅用地に対する課税標準額を軽減するためのものです。住宅用地とは、戸建て住宅やマンション、アパートなどを建てるための土地を指します。
特に固定資産税の負担を軽減する必要があるとされており、下表のように面積に応じて課税標準額が減額されます(※)。
■小規模住宅用地(200m²以下 の住宅用地)→課税標準額の1/6
■一般住宅用地(200m²を超える 住宅用地)→課税標準額の1/3
※参考:総務省.「固定資産税」.“コラム2 住宅用地特例”. ,(参照 2026-04-27).
2. 新築住宅特例
令和8年3月31日までに新築された住宅には、固定資産税の減額特例が適用されます(※)。一般住宅の場合、具体的な減額割合や対象となる期間は下表の通りです。
■一般の住宅
【対象期間】3年度分
【減額割合】1/2
【対象となる床面積】居住部分に係る床面積で、120m²以下の部分
(120m²を超える場合は120m²相当分まで)
■3階建以上で耐火構造の住宅
【対象期間】5年度分
【減額割合】1/2
【対象となる床面積】居住部分に係る床面積で、120m²以下の部分(120m²を超える場合は120m²相当分まで)
長期にわたり良好な状態で住み続けられると認定された「長期優良住宅」の場合は、下表のように異なる基準が適用されます。
■一般の長期優良住宅
【対象期間】5年度分
【減額割合】1/2
【対象となる床面積】居住部分に係る床面積で、120m²以下の部分(120m²を超える場合は120m²相当分まで)
■3階建以上で耐火構造の長期優良住宅
【対象期間】7年度分
【減額割合】1/2
【対象となる床面積】居住部分に係る床面積で、120m²以下の部分(120m²を超える場合は120m²相当分まで)
※参考:総務省.「固定資産税」.“コラム3 新築住宅特例”(参照 2026-04-27).
固定資産税を基にした家賃の決め方
ここでは、固定資産税を基にした家賃の決め方を紹介します。絶対的なルールはありませんが、目安として、固定資産税の経費率(年間家賃収入に対する固定資産税の割合)が10%以下(およそ5〜10% 程度)となるように家賃を設定すると、安定した賃貸経営を実現しやすくなるでしょう。
以下では、全10戸のアパートを所有していると仮定し、固定資産税の経費率が7%となるよう、適正な家賃設定を考えます。ある年の固定資産税が45万円の場合の1戸当たりの家賃を設定していきましょう。
1. 年間家賃収入を計算する
まずは以下の計算式を用いて、固定資産税と目標とする経費率から年間家賃収入を求めます。
年間家賃収入
= 固定資産税 ÷ 固定資産税の経費率
= 45万円 ÷ 7%
≒ 642万8,571円
2. 1戸当たりの家賃を計算する
先ほど求めた年間家賃収入から、1戸当たりの家賃を計算します。
1戸当たりの家賃
= 年間家賃収入 ÷ 10戸 ÷ 12カ月
= 642万8,571円 ÷ 10戸 ÷ 12カ月
≒ 5万3,571円
つまり、1戸当たりの家賃を5万3,000〜5万4,000円/月と設定すれば、固定資産税の経費率を約7%に抑えられます。
ただし、この家賃設定が必ずしも正しいとは限りません。次の項目で紹介する同じエリアの家賃相場や所有物件のグレードなどの要素も考慮して、適正な家賃を考えていきましょう。
固定資産税以外で家賃の決め方に関係する要素
家賃を決めるときは、固定資産税だけではなく、以下のような要素も考慮する必要があります。
● 同じエリアの家賃相場
● 所有物件のグレード
それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。
1. 同じエリアの家賃相場
所有物件の家賃を決めるときは、同じエリアにある競合物件の家賃相場をチェックしておく必要があります。競合物件の家賃と所有物件の家賃が大きく異なると、入居者希望者が集まりにくくなるためです。
競合物件の家賃は、不動産会社のWebサイトや不動産ポータルサイトなどで確認できます。特に、所有するマンションやアパートと似た物件の家賃に注目し、相場を確認しておきましょう。
また家賃は次のような条件によって変動するのが一般的です。
● 築年数:新しいほど家賃が高い
● 駅からの距離:駅から近いほど家賃が高い
● 階数:上の階ほど家賃が高い
● 設備:オートロックや宅配ボックスなどの設備が充実しているほど家賃が高い
● 構造:鉄筋コンクリート造・鉄骨造・木造の順で家賃が高い
可能であれば、上記の条件に合う競合物件に絞り込み、家賃相場を把握しましょう。
2. 所有物件のグレード
所有物件の家賃を決めるときは、仕様やグレードも考慮しましょう。これらに見合わない家賃設定では、せっかく内見してもらっても入居につながらない可能性があります。
例えば、安価な壁紙やフローリングが使われていたり、古い型のトイレやユニットバスが設置されていたりすると、グレードが低いと判断されてしまうかもしれません。先ほど紹介した周辺の家賃相場を参考にしつつ、設備や内装の状態に応じて適切な家賃を検討することが大切です。
固定資産税を基に家賃を決めるときのポイント
固定資産税を基に家賃を決めるときは、以下のようなポイントに注意しましょう。
● 定期的に家賃を見直す
● 固定資産税以外の経費も考慮する
● 信頼できる不動産管理会社やマンション管理会社に相談する
各ポイントの詳細は次の通りです。
1. 定期的に家賃を見直す
最初に決めた家賃を固定するのではなく、社会の変化などに合わせて定期的に見直しましょう。前述の通り、固定資産税は3年ごとに評価額が見直される(評価替え)ため、このタイミングを一つの目安として、収支バランスや家賃設定にズレがないか定期的に点検するのがおすすめです。
例えば、時間の経過によって、次のような変化が生じている可能性もあります。
● 変動金利における利息の変化
● 税制や保険料の改定
● 物価の上昇
また周辺の競合物件の家賃相場も変わっている可能性があります。収益や空室状況に問題がない場合は家賃を変える必要はありませんが、収益が悪化していたり、空室が増えていたりする場合は、家賃設定を見直す必要があるでしょう。
2. 固定資産税以外の経費も考慮する
家賃を決める際に考慮すべき経費は、固定資産税だけではありません。以下のような経費についても、しっかりと把握しておきましょう。
● 修繕費:所有物件のメンテナンスや修繕にかかる費用
● 管理費:入居者募集や契約などに関する費用
● 水道光熱費:共用部分の電気代や水道代
● 借入金利息:物件取得のための借入金に対する利息
● 損害保険料:損害保険や施設賠償保険の保険料
● 租税公課:事業税・印紙税・不動産取得税など
● 交通費:金融機関への移動や物件管理のための交通費
● 新聞図書費:賃貸経営に関する情報収集のための書籍・新聞代
● 消耗品費:事務用品やパソコンなどの購入費用
● 交際接待費:賃貸経営のために必要な相手との交際接待費用
● 雑費:その他の費用
固定資産税と同様、上記のような経費が家賃収入に対して大きな割合を占めていると、収益が悪化します。賃貸経営を継続できなくなる可能性もあるため、さまざまな経費を考慮した上で、適切な家賃を設定しましょう。
3. 信頼できる不動産管理会社やマンション管理会社に相談する
家賃設定に悩んだときは、信頼できる不動産管理会社やマンション管理会社に相談するのがおすすめです。専門的な知識と経験を持つ管理会社に相談すれば、競合物件の情報や入居者のニーズに基づくアドバイスを受けられるほか、個別具体的な税務相談については専門家をご紹介する窓口としてサポートを受けられます。
その他、不動産管理会社やマンション管理会社に相談すれば、以下のようなメリットを得られます。
● 周辺環境や経済環境の変化などを含め、幅広い視点から意見をもらえる
● 類似物件を多く取り扱っており、実績と経験を基にしたアドバイスを受けられる
● 長期的なサポートを期待できる
いくつかの会社に問い合わせ、信頼できそうなサービスを利用しましょう。
【まとめ】家賃を決めるときは固定資産税や周辺の家賃相場を考慮しよう!
今回は、家賃を決めるときに考慮すべき固定資産税の計算方法や、固定資産税を基にした家賃の決め方などを紹介しました。
固定資産税は、賃貸経営において毎年発生する固定費の一つです。年間家賃収入に対する固定資産税の割合が大きくなり過ぎると、収益が悪化するため、固定資産税を考慮した家賃設定を心掛けましょう。
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